経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

貸借対照表

第20回:貸借対照表の何にこだわっているか

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それにしても、ここまで自己資本比率に集中するとは考えていませんでした。「企業の価値は要するに自己資本比率でしょ」と長寿企業の皆さんから言われている感じがします。これは経営の安全性、安定性を何よりも一番に考えているということです。
自己資本比率を上げるには、利益を出して、利益準備金などを蓄積してゆくこと。次に、社長や外部の法人、個人がお金を出して、新株を買って増資をしてゆくこと。この二つです。
取材をしたある長寿企業は、血縁3代目の社長さんですが、「株は全部親族がもっているので、配当する必要がありません。利益はそのまま残るので、無借金ですし、自己資本比率は70%を超えています」と言われてました。普通の同族企業は逆なんですね。全部同族で株をもっているから、配当を全部手にして潤っている、ということです。
取材をした長寿企業ではない運輸関係の会社は、創業者の先代から会社を継承したときには、自己資本比率はヒトケタ台で潰れかかっていたらしく、そこから30年たち、現在は65%までもってきたと言われてました。資本金は1,100万円ですから、それほど大きくありませんので、新株発行ではなくて、利益を出して蓄積してこられた、ということがわかります。素晴らしい2代目さんです。

当社・出版文化社は、最初に資本を出していただいた方々が8人おられ、亡くなられて買い取っていきましたが、現在も当時の外部株主さんが2人おられます。それに10年前に社員持株会を発足させましたので、ほぼ毎年、配当金を出してきました。時には株主さんに再投資をしていただくために、50%の配当をしたこともありました。よって、利益の蓄積はあまり大きくはなく、自己資本比率は20%程度です。今年は新株を発行する計画をしており、増資による自己資本比率をあげることを考えています。
こだわりの2位には流動資産がきています。現金、および1年以内に現金化できる資産がいくらあるか、ということに関心があるということです。第3位には長期借入金を代表とする借金への関心の高さとなりました。近年は税務当局の指導により1年未満に返済する借入を流動負債、1年以上にわたる借入を固定負債に入れるようになったので、より明確になりました。

第14回:長寿企業における労働組合の有無と貸借対照表(BS)のこだわり第1位


長寿企業で、労働組合のある企業と無い企業には、貸借対照表へのこだわりに、何か有意な差があるかどうかを見たアンケート結果です。

これを見る限り、大きな差はないようです。あげるとすれば、流動負債に対して有る企業が3%、無い企業が11%。ここに若干の差があります。流動負債の多くは有利子負債ですから、労働組合の無い企業は、若干、有る企業よりも、有利子負債への関心が高い、と言えそうです。
一方、流動資産への関心も、無い会社のほうが6%高いようです。流動資産は現金または、1年以内に現金化できる資産のことですから、いわば手元の資金といってよいでしょう。無い会社は、手元資金の確保をより重視しており、その反対の有利子負債の多寡にも関心が高いということです。
これは労働組合の有る企業の平均社員数が509名、無い企業の平均社員数が123名ですから、企業規模にも関係がありそうです。

関心が高いのは、なんと言っても自己資本比率です。どちらも過半数を占めています。資本(資金)的に独立しているかどうか。これは労働組合の有無に関係なく、ダントツに高いと言えそうです。7%の誤差が出ていますが、59と52ですから、有意な差と言えるほどではないようです。
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