経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

継承

第59回:過去10年の経常利益の平均、および同族、非同族と、先代から受け継ぐ要素:情報

長寿企業の経常利益の現状と、先代経営者から引き継ぐ要素として「情報」を大事に考えている経営者の回答を掛け合わせたものです。ここからは経営の利益率と情報への関心の強さに関係があるかどうかがわかります。

59図表

「情報」は外からもたらされる情報だけでなく、社内で生み出して交換される情報、つまり意志決定の経路や会議体のあり方も、情報の仕組みとして考えています。もちろんIT系の情報システムも含まれます。
「カネ」「技術」と比較すると、一目瞭然の違いです。赤字会社以外のグループで「重要」は2位となっています。特に、11%以上のグループで「重要」は、「どちらとも言えない」と同数の2位ですから、「情報」に対する評価は低いと言えます。
数量は別にして、順位だけを捉えると、11%以上の企業では評価が低く、赤字の企業では評価が高い、という結果です。これには何か意味がありそうです。高収益の会社は情報に頼った経営はしていない、ということであり、赤字の企業はいつもたらされるとも限らない情報に頼った経営をしているので、安定しないということでしょう。

59グラフ

同族の「やや重要である」と非同族の数を%に置き換えると、各々48%と43%です。「どちらとも言えない」以下の数字を%に置き換えると、合計で同族が27%、非同族が25%です。いずれも、非同族の人たちの評価が低いと言えます。情報については、先代からいただいても、あまり役に立たない、という認識は同族も非同族も同じですが、若干、非同族のほうが厳しい目に見ているようです。

第56回:過去10年の経常利益の平均、および同族、非同族と、先代から受け継ぐ要素:モノ

長寿企業の経常利益の現状と、先代経営者から引き継ぐ要素として「モノ」を大事に考えている経営者の回答を掛け合わせたものです。ここからは経営の利益率と「モノ」への関心の強さに関係があるかどうかがわかります。

56図表

利益率が10%以下と11%以上では、モノを重要と考えている人が第1位となっていますが、5%以下、2%以下のところでは重要を選んだのは第2位になっています。ここに若干の価値観の違いが見られます。それは「モノ」を重要に考える経営者の会社の利益率が高いということは、モノを大切に扱うことで、製品や商品を大事にし、または設備を大事にする、という経営者の考え方が社員に浸透し、それが利益をもたらしてくれていることが想像できます。

56グラフ

同族で「重要」と答えているのは37.1%、非同族では46.2%で9.1%の差で、非同族のほうが、大事と考えています。さらに「やや重要」にまで拡大してみると、非同族の「やや重要」と「重要」の比率は92%。一方、同族は83%と下回わります。

「やや重要」の部分は、ほぼ同じ%がでていますので、「重要」と考えている人が、非同族に多いということです。これは意外な結果でありました。同族のほうが、モノに対するこだわりがある、モノを大切に考えている、と予測していたからです。
ここにはどういう心理が働いているのでしょう。同族でないと、会社の物的資産を引き継ぐことは難しいので、会社の資産に関心が強いとは考えにくい。よって、継承するための資産への関心ではなくて、実際に経営を進めてゆく上での物的資産への関心が強いと考えられます。また、製品や商品へのこだわりということも考えられます。資産の効率運用という関心が、底流にあるのかもしれません。

第52回:経営を継承する人たちに求められる考え方

52グラフ

「社員との良好な関係」が圧倒的に第一位にきています。同族の経営者が、息子か、同族ではない社員か、後継者を想定して、その人に何を求めるのか、を考えていただいた結果です。同族企業がほとんどですから、まずは社員が納得して付いてきてもらわねばなりません。よって「社員との良好な関係」がトップにきています。次に利益確保、そして「販売先との良好な関係」を築くことです。
80%の企業が平均で4代にわたって同族経営できて、株式の75%以上を所有しているわけですから、圧倒的な力をもっています。だからこそ、社員に付いてきてもらわないことには、平均224人の会社を同族だけで維持してゆくことができないからです。

創業時に会社は何らかの目的があって始められます。「もっている技術や商品を試したい」「勤めていた会社がおかしくなったが、この仕事を続けたい」などさまざまですが、最初から「社員の雇用を守るため」という目的を持つ会社はほとんどありません。よって、この答えは、長寿企業ならではであろうと思います。
長寿企業は、長年の間に、事業内容や事業目的を変化させて、生き残ってきました。それは当初の事業が不易と流行によって、残ったところと変化したところが有るからです。
最初はビジネスの内容そのものが目的だったのが、長年の間に、組織そのもののために動くようになる。つまり、雇用を守ることが一番大事なことになってきます。

取材をしたある東京の会社は、現在の資生堂の創業者・福原有信氏を輩出したと言っておられました。著名企業でなくても、このように起業家を輩出した例は長寿企業には枚挙にいとまがありません。
起業する人物を輩出し、雇用している社員の雇用を守っている。長寿企業はまさしく社会を下支えしている、大事な経済インフラのひとつであると言えるでしょう。

第51回:代々の経営者の同族性と、経営の継承が上手くできた理由

代々の経営者が同族である企業と、そうではない企業に、経営の継承が上手くできた理由の回答を比べてみました。

51図表

当然ではありますが、同族においては、圧倒的に「同族である事」が選択されています。そして第2位に入ったのが「継承する者同士の意志疎通を大事にしたから」で、これは同族でない企業でも2位になりました。逆に、同族でない企業では「非同族に切り替えたから」というのが1位になりました。これは同族経営者に適当な人物がいなかったか、同族の後継者に成果が上がらず、非同族の経営者にバトンタッチをせざるを得ない、状況に陥ったからでしょう。
後継経営者の80%は同族者ですから、「どうしても同族後継者に恵まれなかった」ようなケースでしか、平均144年、229名の長寿会社では経営を同族以外の人に任ることはできなかったようです。

また、非同族でも今までやってこられたのは「同族経営を続けてきたから」という回答がありました。これは現在は非同族者が経営をしているが、同族経営そのものを否定的に見ているわけではないので、どこかの時点で創業家への大政奉還の可能性を含んでいるのではないかと思います。

第46回:企業の経営継承力(2)――先代の考え方をどのように継承したか

先代経営者から当代経営者はどのようにして経営を引き継いだか、という方法については、一緒に仕事をしてが73.8%、口伝は18.0%、社史を使った例は3.5%でした。ほとんどの会社では、長年、先代とともに仕事をしてきたので、その中で経営の方法や考え方が引き継がれてきたようです。

一代の経営期間はおよそ40年であるという試算を第44回の時にしました。それは30年が一代の経営者としてのピークだとすると、2代目以降には前後に継承される時代と、継承する時代があります。成功長寿企業は経営の継承がうまくいっているケースが多いからこそ、経営が順調です。その前後の時代をどのように前任者と後継者が過ごすか、というのはたいへん重要な時代で、この善し悪しによって、経営の継承の正否が決まります。成功長寿企業は、そこのところを上手にできたからこそ、今日につながりました。
一緒に仕事をして経営を継承したのが3/4で大半を占めます。そして口伝と社史ですが、直接に語って引き継がれたことは、「一緒に経営をして」ではないことから、一子相伝のように先代から後継者へ語って引き継がれています。いまでもこういう引継方があることに驚きました。
 また、少ないですが社史を媒介にして経営を引き継いだ、というケースがありました。社史はそれを作る途上で、先代と後継者が歴史認識を交換したり、共有したりする機会があり、経営の継承が同時に進められる、ということは社史を作っておりますとまれに遭遇します。また社史で取り上げる時代を、先代の時代までとして、社史発刊を先代の花道とする方法をとられる企業もありました。
一代平均で40年の経営期間があると考えると、前任者と後継者が重なって働く期間も長くとれます。その期間こそ、次の代を繁栄に導く役割を担っているのではないでしょうか。

今回のアンケートには、日本で120年余り事業活動をしてきた、世界最大の民間会社エクソン・モービル有限会社も対象となっており、アンケートの回答をもらい、トップのインタビューもいたしました。その時に、米国系の企業で、巨大な組織だから、経営のマニュアルが用意されていると思って聞いたところ、そういうものは無い、と断言されました。次いで、経営の継承について尋ねたところ、「一緒に経営する期間をおいて、引き継がれる」と答えられ、日本と変わらなかったのを思い出します。
400万年前、いまのエチオピア当たりで生まれたホモサピエンスは、なぜ彼の地から地球の隅々までの遠い旅路へと着いたのでしょうか。それは夫婦の妻が長生きして、娘に出産の危機を乗り切る方法を教えられるようになったからだと言われています。つまり、人口が急速に増加したことによって食糧危機に見舞われ、他の地を求めて歩き出したわけです。そうして、人類は今日に至る長い旅を続けてきました。

先代の長生きが、次世代をバックアップすることで、スムーズな運営を助けることは、私たちの経営の継承にも言えるのではないでしょうか。先代経営者が長生きをし、後継者とよい関係を保って補佐する態勢を作れるか否かは、まさに企業の「経営継承力」が問われているのだと思います。
著者プロフィール
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ