経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

経営努力

第83回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

2)自浄作用があるか
                                    
まず上げられるのは、経営者が交代したことです。会社にとっては、これほど大きな改革はありません。その時に、同族役員なども退任させています。それを契機に、同族役員を半数以下にするという改革をおこなった会社もありました。次に大きな改革と言えるのは、人事制度の刷新です。退職金を辞め、年俸制に切り替え、残業をなくすなど、大鉈を振るったケースがありました。
長い経営年数に生き残るには何が必要なのか。それは経営哲学であるというのが、大半の答えでした。長寿企業は企業としては大木に育っています。その根っこに当たる部分が経営哲学です。目には見えませんが、その根が地中でしっかり張られていれば、時代の変化としての風や嵐が来ても倒れません。根が短かったり、腐っていると、地上の図体が大きいだけに、たちまちのうちに倒れてしまいます。経営哲学をしっかりと作り上げ、社員と共有できているかどうか、ここに注力しているのが長寿企業でした。
ただ、立派な経営哲学を作り、社員との共有化と浸透を図ることを仕組みとして取り入れて、間断なく行ったとしても、経営者が悪るければ、元の木阿弥です。もっとも自浄作用が働かなければならないのは経営者自身の人間性です。「会社は売上のためにある」と考えず、「社員は利益のために働いている」と捉えてはならないのですが、時として、そのように流されることがあるのも、経営者も人間であることの一面です。
長年の経営に生き残れた理由に、「カネ」がひとつも上がっていません。第一に上がっているのは「ヒト」です。カネは生き残るための道具ではありますが、一過性のものです。カネが順調に入って出ていき、いくらかが滞留してゆく仕組みを作る必要があります。単に、ビジネスモデルではありません。ビジネスモデルには経営哲学が含まれません。ビジネスモデルに経営者の経営哲学が加わり、それに賛同する社員が集ることが、そのビジネスモデルを長期間にわたって、順調に回していく必須条件になります。
そのためには、経営者の人間性と人生観がつねに自浄され、会社と共に進化してゆくことが必要です。これが経営者の構造化調査でわかったことでした。
この経営者の自浄作用のほかに、もう一つ上げておくのは、商品に恵まれることです。長期経営をするには長きにわたって、商品が生き続けることが前提です。継続性のある分野を選び、持続力のある商品をつくること。そしてその品質を落とさず、あるいは磨きをかけてゆくことが大事です。短期間の好不況で売上が変わる商品では、長期経営がおぼつきません。近年の企業の盛衰を見てもよくわかることです。

第81回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

8.経営者の驕りをいかに防いできたか

人間性は変化します。会社を作った当初は、清い大義名分と強い意志をもっていた経営者も、経済基盤ができ、いろんなところでいい目をするようになると、人間性が変化することがあります。驕り、高ぶり――これは本人が気づけば治まり、本人も他人も組織も傷つくことなく終わります。しかし、驕っているときの本人は、自分の驕りに気づきません。そして、社員や人に対する話し方や態度が徐々に変わります。
「社長待遇というのがあるでしょう。取引先からはちやほやされ、いろんな会合へ行っても上座へ座らされる。こういう待遇に慣れてくると、人間は弱いもので、物事が自分の意図どおりに行かなかったときに我慢できなくなるんです。それを驕りというのではないでしょうか」。このように、具体的に自分自身に「驕りの定義」をもっている経営者は、一種のバロメーターがあるので、驕りに気づきやすいでしょう。
ある経営者はこうも言います。「自分が経営しているというよりも、この期間だけ自分がこの会社を預かっている、と考えています」。こういう考え方ができれば驕りとは無縁の経営者になれるでしょう。
日経ビジネスが1984年に発表した『会社の寿命』で、会社がその命脈を絶やす要因には大きく分けて2つあると言いました。

経営者が変身努力を怠る
無謀な多角化によって、企業の命を絶やす

このふたつは二律背反しています。
変身する努力をしなさい、だが無謀な多角化はダメ、ということです。どの程度を変身努力と言うのか、どこからを無謀な多角化と言うのか、不明瞭です。企業が成長すれば、多角化路線は当たったと言われ、業績が下降すれば無謀な多角化と言われる。だからこそ、謙虚な姿勢と見方を失わないための人間性が必要なのでしょう。
変化することは賢明なことですが、同時に、古きを捨てて新しきを得ることでもあります。ここに語られているのはシステムではなく、経営哲学です。しかし、企業である以上、経営者を驕らせないための仕組みが必要です。先代経営者が長生きする、というのも一つです。しかし、これを仕組みに取り入れることはできません。中小企業にとっては、これを仕組みとして組織に備えるのは容易ではありません。
備えるならば、代表者にモノの言える人を代表者の近くに置く、ぐらいでしょう。社外取締役を採用したり、監査役を強化することもひとつです。長寿企業には長寿するための経営哲学として、伝わっているものは確かにありました。
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