経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

社員持株会

第65回:アンケート調査から見える長寿企業の平均像

3.社員持株会が有る長寿企業の経営成果

1) 社員持株会を有する会社は無い会社の1.39倍の社員数を保有しており、有する会社と無い会社の社員数には有意な差があった。結果として、有する会社は無い会社より経営の成果が大きい、と言える。

2) 「実力主義とやや実力主義」を選んだ会社は標本全体の45%に達し、特徴的なのは社員持株会をもつ会社は、その中の32%と少数派であることだ。実力主義を標榜するゆえに、家族主義を具体化する社員持株会のような組織は不要と考えられている。

3) 「家族主義・やや家族主義」の会社は全体の19.5%になるが、その中で社員持株会があるのは46%となる。このように社員持株会の有無には、その会社の考え方が如実に現れている。

4) 社員持株会の経営成果であるが、有する会社は過去10年の経常利益率が高い会社が多く、低い会社は少ない。一方、無い会社は利益率が高いか、低いかの極端に振れる傾向が強い。ここには社員持株会をつくる会社の社風が反映し、有する会社は社員と会社の関係が安定していることが読みとれ、無い会社は安定していないと言える。つまり無い会社は実力主義を標榜しているので、成績の良くない社員は変えてゆくこととなる。逆に有する会社には家族主義がとられている例が、無い会社よりも多く、社員を月々の成果だけでは見ていない。
そこで社員と会社のギスギスした関係とスムーズな関係による社員の離職率や定着率などに違いが出てくると考えられる。この傾向は「過去10年の経常利益率」だけでなく、「同業他社と比べた過去の収益状況」を見ても、同じ傾向が見られた。よって社員持株会を有する会社と無い会社の経営成果には明らかな違いが見られる。さらにこれらの数値から、社員持株会の有無と、業界他社との収益性を比較すると、若干ではあるが、社員持株会がある会社は収益性が高い。この結果からわかる事は近年の経営数字に対して、社員持株会があるかどうかは影響がある。しかし、長い経営年数のなかにおいては、その有無が作用してきたとはいえない、ということである。
これは社員持株会がいつのころにできたか、という事とも関連してくる。社員持株会は1960年代後半に日本がOECDに加盟したことにより、資本の自由化が進み、外国資本からの企業買収を避けるために、株主安定化策の一環として取り入れられ、株式上場企業を中心に広まってきた制度である。*
よって、非上場会社に広がってきたのは、その後年であり、ここに採り上げている長寿企業が導入したのも、それほど古いことではないと考えられる。社員持株会が会社の長年の
経営成果に与える影響が見られないのは、そのような事情があると思われる。社員持株会そのものは、ここに採り上げた長寿企業全体の35%程度しか導入されていないので、長寿企業の特徴的な経営手法のひとつとは言えない。

*道野真弘(1997)「従業員社員持株会の問題点」『立命館法学』1,2010年11月20日検索,
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/97-6/michino.htm

第10回:同族者がもっている株式の比率

316社の回答では、同族者がもっている株式の所有比率は76.1%でした。これはたいへん高い比率と言え、長寿企業の同族者はしっかりと会社の経営権を所持していることがわかります。

持ち株比率が50%を上回りますと取締役の選任・解任ができ、66.6%を上回ると経営を監視する監査役の選任・解任ができます。つまりいつでも社長を替える権限をもっているということですので、同族の中で社長を選び続けることもできます。他人を社長にしたとしても、いつでも替えられるので、逆に、社長さんはたいそうやりにくいことでしょうね。よほど給与がよいか、やりがいがあるか、名誉になるかでないと引き受けないでしょう。

また、会社の内容を変える重要事項を決定することもできるので、合弁やM&Aなどへの対応も、同族者間で決められます。今回の調査の長寿企業は非上場の企業を選んでいます。規模的には株式を公開できる企業もたくさん含まれていますが、その点では保守的な側面が見えてきます。

コラム10用グラフ

第7回:社員持株会の有無と、過去10年の経常利益と創業以来の黒字年数の関係

社員持株会の有無と、過去10年の経常利益平均との関係
単位:社
  赤字 2%以下 5%以下 10%以下 11%以上 合計
有り 1(0.1%) 41(38%) 45(41%) 20(18%) 3(3%) 110(100%)
無し 6(3%) 81(40%) 78(39%) 25(12%) 11(5%) 201(100%)
合計 7(2%) 122(39%) 123(40%) 45(14%) 14(5%) 311(100%)

 前回に続いて、社員持株会の有無と、利益がどのような関係にあるのかを探ってみたところ、上記のような結果となりました。
 2%以下を利益率の低い会社とした場合、有:38%で、無:43%で若干、無い会社のほうが多いですが、有意な差ではありませんでした。また、10%以下と11%以上を利益率の高い会社と考えた場合、有:21%、無:17%で、これも有意な差ではありませんでした。しかし、どちらも持株会がある会社の方がよい経営をしているのには、有意な違いがあると言えるでしょう。よって、持株会があるほうが、安定的な経営をしている傾向がありそうです。

 また、持株会の有無に関係なく、全体の傾向を見てみると、回答のあった企業の中で、赤字企業は全体のわずか2%でした。企業全体の赤字率は70%(2008年国税庁調査)ですから、長寿企業の優秀な経営が明確に出ています。ただ、アンケート全体の回答率は21%で、他の79%のうちにどれぐらいの赤字企業があるのかはわかりません。
 この表の中で利益率が低い2%以下は39%、3~5%は40%、6%以上は19%になります。財務省の法人統計調査では黒字企業の平均利益率は2.4%(2008年)ですから、3%以上の利益率を出している長寿企業は59%になりますので、さすがに、尊敬される長寿企業の優秀さが浮き彫りになっていると申せましょう。
 ぜひ、こういう経営を目指したいものです。
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