長寿企業がこだわっている損益計算書の項目は1位と2位に利益関係が上がっており、売上よりも利益が大事と考えていることがわかりました。それは成長よりも、事業継続を大事に考えている傾向が強い、と解釈できます。調査対象企業はすべて非上場会社なので、利益を出して、株主に還元する、という差し迫った必要はありません。それでも利益にこだわっているのは、企業を永続することこそが、最大の目的ということです。営業利益から当期純利益までを合計すると213件、全体の66%で、実に2/3社が利益に一番にこだわっていると答えています。

思い出しますと、アマゾンやソフトバンクは初期のころ、なかなか利益がでない時代がありましたが、綱渡りの資金繰りをしながらも、売上重視で走っていました。ジェフ・ベゾス氏と孫正義氏は天才的な経営者ですから、その時代に企業を急拡大させて、その後、利益がでる経営へと移行していきましたが、多くの企業は、その過程で潰れてゆきます。
逆に、長寿企業の売上に対するこだわりは18.6%です。5社に1社もありません。売上を追ってはいない、ということを多くの長寿企業が明確に打ち出しています。会社の業績には、(1)増収増益 (2)減収増益 (3)増収減益 (4)減収減益の4つがあります。(1)はもっとも経営者にとって経営しやすい業績であり、環境です。打つ手の多くが当たり、会社も社員も活気づいて、社員がもっていたさまざまな不満も、(1)の状態で有れば昇華してゆきます。長寿企業を含む、ほとんどの企業は、こういう状況になることを望んでいます。
一方、(4)の状態は、固定経費や販管費を削減する、または社員数を減らすか、起死回生のヒットを打つなどの方法で挽回しないと立ちゆかなくなります。会社の雰囲気が悪く、社員が退職してゆき、残った社員の仕事が増え、不満が溜まっています。ヒト、モノ、カネ、技術、情報、哲学に、何らかの手を打たないと、ズルズルと後退するばかりになります。
残るは(2)(3)です。多くの企業はこの2つのいずれかの状態にあります。概ね横ばいと言っても、数字を厳格に解釈すると、どちらかに入ります。この2つのうち、長寿企業のほとんどは(2)を選びます。なぜなら、企業の存続を考えたとき、売上は伸びるけれど、利益が減っているのは危ないからです。売上が伸びるときは、資金の回転が速くなっているはずです。早くしないと回収遅れは資金ショートの危険が増し、企業のリスクが増大することになります。
一方、(2)の状態は利益は確保できているなら、資金の回転は急がなくても、ゆったりと資金繰りができます。取引先の都合に合わせることができるので、より円満な取引ができることにもなります。ただし、売上が伸びない以上、組織の拡大はありませんので、社員のポストは増えません。売上が増えないということは仕事が増えていないので、若い人や新卒を採るのも難しく、会社の平均年齢は毎年1歳ずつ上がります。長寿企業では社員への精神的なケアに注意が注がれており、イコール社員を大事にする、という社風が育つのは、このような経営数値のこだわりからも、読みとれることがあります。