長寿企業の定性面の分析を進める前に、いま、長寿企業が置かれている環境について整理しておきたい。それは驚きに値するものであるとともに、144年という今回の調査対象企業の平均年数がいかにすごく、価値あることかがわかるからである。

帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)はともに何度か、長寿(老舗)企業の倒産動向調査を発表している。入手可能なデータにTDBの2001年の発表の分があり、1990年からの全体に占める長寿企業の倒産比率がある。TDBもTSRも30年以上の企業を長寿としており、1990年では長寿企業の倒産は全体の7.2%であったが、2001年には24%まで上がっている。さらに2005年まで調べた続報では30.2%となり、過去最高を更新している。
それにTSRの資料をつなげると、2011年では業歴30年以上の倒産構成比率は31.1%となり、年々、比率が上がっていることがわかる。

TDBによると30年以上の中でも60年を超える企業、つまり30年の倍を超える業歴の企業倒産が増えているという。統計を取り始めたのが1987年からで、当時、全倒産件数に占める60年以上の業歴の倒産社数比率は0.4%、1,000社に4社だった。それが2004年には1.1%と約3倍になった。
このように長寿企業は、近年、非常に厳しい経営環境におかれている。その要因は、読者諸氏にも心当たりのある方が多いだろう。
新設企業よりも以前から資産をもっていただけに、バブル崩壊による資産価値の下落の影響が大きい。これは長年、多くの長寿企業が背負ってきた負債で、どこかで膿を出しきる英断が為されなかったら抱え続ける。本業が厳しくなった時、これが最後の引き金を引くことになる。世界最古の企業といわれてきた大阪の金剛組の2009年の倒産は後者が要因になったと言われている。
続いて、長寿企業を悩ますのは、規制緩和やIT化などによる産業構造の変化である。規制で守られてきて、ぬくぬくとしてきた業界、会社ほど規制緩和にもろい。とくに、産業構造の変化は2004年当時よりも、近年のほうがドラスティックに進んでいるので、その後も長寿企業の倒産率は高まっている。

調査した長寿企業の経営年数144年は明治維新の前だ。幾多の荒波は日本と日本人を翻弄してきたが、その中でも営々と生き延びてきた長寿企業の生命力は驚異的なのだ。