経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

家族企業

第53回:代々の経営者の同族性と、経営の後継者に求められる考え方

53図表

同族の第1位は「社員との良好な関係」を圧倒的な数字で選んでいます。同族は会社の中では圧倒的な力があるだけに、社員への気遣い、人間関係への配慮が必要となります。同族では第3位にも「販売先との良好な関係」をあげており、人間関係に重きを置いた経営をしている様子がわかります。
一方、非同族では「利益確保への執着」が第1位に選ばれています。まずは、非同族として任されたが、組織を維持、発展してゆくには利益が必要だ。多少の人間関係を犠牲にしても利益を上げる事に執着する非同族の責任感が見えてきます。
次に、「社員との良好な関係」と「経営陣との融和」が上がっています。同族では「経営陣との融和」はできているか、同族だから必要ない、と考えられているようです。
そして、非同族では「経営陣との融和」が3位に上がっています。同族でも、非同族でも、人間関係の上では社員に最も気を遣っており、利益確保には順位の差があることがわかりました。

第29回:家族主義と実力主義の違いと、同業他社に比べた過去の収益状況の関係(タテ比率)

会社の代表者は、自社の利益の現状と見通しをつぶさに観察していますが、それは自社だけを見ているのではなく、同業他社との関係にも常に目と耳を配っています。ここでは前期の自社の利益率を聞いただけではなく、同業他社との比較を聞くことで、業界内での自社の位置づけをどのように見ているのか、を聞いてみました。前期の自社の成果だけではなく、客観的な評価も含まれていますので、興味深い結果が出ています。

29-1

上記の表は、タテを100%とした表です。ここからは下記のことがわかります。
「実力主義」と「家族主義」はともに他社に比べて非常に高い利益率を出していると思っていない。

「家族主義」では非常に収益状況と答えた企業はないが、「実力主義」は1/3が非常に低いと答えている。同様に、「やや家族主義」に非常に低いはないが、非常に低いと答えた企業のうち2/3が「やや実力主義」の会社でした。ここには顕著な違いが現れており、予想の範囲内ですが、実力主義の会社は危機感を持って経営をしている人が多いので、「実力主義」になっているのかもしれません。前節で述べましたように、実力主義は遠心力の強い会社ですから、経営者の目も外に向いています。一方、「家族主義」の会社は、目が社内を向いているので、危機感は実力主義の会社よりも低く、業績よりも社員を守る、ということに重きが置かれている可能性があります。「実力主義」の会社は社員よりも、売上、利益で成長志向が強いので、逆に自社の経営成果は他社に比べて低い、と見ている可能性があります。

「実力主義」と「やや実力主義」を選んだ企業は全体の45%程度ですから、格段に多いというわけではありませんが、「家族主義」と「やや家族主義」を選んだ企業が全体の20%なので、「家族主義」の半分弱になっていることは考慮に入れておく必要があり、その影響はヨコ比率で端的に表れてきます。

第28回:家族主義、実力主義の経営成果の違いについて:総括

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前記の2回でタテ比率とヨコ比率それぞれを見て、長寿企業の特徴を分析しました。このテーマは今回のハイライトの一つですから、タテ比率とヨコ比率を総括しておきたいと思います。

上記では赤字から10%以下までの4項目で、「実力主義」のほうが数が多いことがわかりました。特に、2%以下のところで「家族主義」と「実力主義」の数値差が大きくひらきました。11%以上のところでは「家族主義」と「実力主義」とが同じ数値になっています。この表では、「実力主義」のほうは利益率が悪く、「家族主義」のほうがよいようです。もっともよいのは「やや家族主義」のところの数値が安定しています。赤字企業は「やや実力主義」がトップで、2位はどちらともいえない、でした。
11%以上の企業は、「やや家族主義」がトップで、「どちらとも言えない」と「やや実力主義」が2位。
「家族主義」と「やや家族主義」の赤字と2%以下の合計は31.4%、「実力主義」と「やや実力主義」の赤字と2%以下の合計は101.9%となります。
「家族主義」と「やや家族主義」の10%以下と11%以上の合計は58.9%、「実力主義」と「やや実力主義」の10%以下と11%以上の合計は77.5%となります。

ここからわかるのは以下のことです。
  1. 家族主義傾向の会社は、赤字を出す比率が低い
  2. 実力主義傾向の会社は、赤字を出す比率が高い
  3. 家族主義の会社の利益率は高くない
  4. 実力主義の会社の利益率は家族主義よりも高い会社が多い
  5. 実力主義の会社は、利益率が高いか、低いかもしくは赤字かというように極端に分かれる傾向がある
  6. 家族主義の会社は、利益率が低くもなく、高くもなく、中庸にくる
  7. やや家族主義の会社が最も高い利益率を確保している
  8. 2%以下の利益率の企業が最も多い
  9. 5%以下の利益率の企業が80.7%を占める。長寿企業の利益率は高くない
  10. 「10%以下」以上の利益を最も多く獲得しているのは「やや家族主義」で、25%の企業が5.1%以上を確保している
  11. やや家族主義と家族主義の5.1%以上の利益率は41.7%
  12. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は26.3%
  13. やや家族主義と家族主義の2%以下の利益率は98.9%(200%のうち)
  14. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は88%
  15. 家族主義のほうが利益率は高い。しかし赤字企業はない
  16. 「どちらともいえない」と「やや家族主義」を比較しても、「やや家族主義」のほうが利益率がよいのがわかる。
ここから言えるのは、「実力主義」「やや実力主義」より、「家族主義」「やや家族主義」傾向のほうが利益率は高く、経営の安定性があることです。また、「どちらとも言えない」よりも、「やや家族主義」のほうが利益率が高いので、中庸よりも、「やや家族主義」とするほうが利益率が高いことがわかります。これは本調査で得た気づきの一つであると考えられます。一般的には、実力主義のほうが利益率は高いと考えられてきたことを覆す結果となりました。

第27回:家族主義と実力主義と、過去10年の経常利益の平均:ヨコ比較

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 前回のタテ比率と違って、各々の主義の会社には、どういう経営成果の会社が多いのか、というのがわかる図・表です。一つずつ見てみましょう。

「家族主義」の会社は赤字の会社はありませんが、2/3は0.数%~1.9%の範囲にあります。よって、利益率のよい集団とは言えません。
一方、「実力主義」の会社は2%以下に4割があり、5%以下にも4割を超える企業があります。相対的に「家族主義」のほうは低く安定しており、実力主義はよい企業とよくない企業のバラツキがあり、「家族主義」よりは若干高めの経営成果を上げている、と言えそうです。
「やや家族主義」では、73.3%が2%以下と5%以下のところにあり、「やや実力主義」では79%がその範囲にあります。そして10%以下と11%以上では「やや家族主義」が25%,18.4%が「やや実力主義」でした。そして、赤字企業は「やや実力主義」のほうが少し多かったようです。これらを見ると、「やや家族主義」のほうが経営成果は高く、経営が安定していると言えそうです。

筆者は、経営の力学によく遠心力と求心力という例えを使います。遠心力は外に拡がろうとする力ですから、会社が売上や企業の規模が拡大する力のことです。求心力は逆に、中心に向かおうとする力ですから、最終損益に向かっていくので必ずしも売上の拡大を望んでいるわけではありません。家族主義は求心力、実力主義は遠心力と考えられますので、やや求心力が強いぐらいが経営成果としては安定していると言えそうです。しかし、あまりに求心力が強いとそれも困りまして、低成長低利益体質になってしまいます。つまり、社員の雇用を守ることが第一優先になって、会社の利益よりも強い存在意義になります。それは素晴らしいことではありますが、やはり会社としては伸びない。いずれじり貧になってしまう可能性もあります。
このようなことから、「やや家族主義」=やや求心力の強い会社、ぐらいがちょうど経営の進展には適当であることが、この数値から読みとれます。

第13回:長寿企業における労働組合の有無と損益計算書のこだわり第1位

単位:%
  売上高 原価 粗利益 販売
管理費
営業
利益
経常
利益
当期
純利益
合計
有り 15 2 10 0 23 31 19 100
無し 21 2 11 0 25 28 13 100
誤差 -6 0 -1 0 -2 3 6 0

長寿企業で、労働組合のある企業と無い企業には、損益計算書へのこだわりに、何か有意な差があるかどうかを見たアンケート結果です。これを見る限り、それほど大きな差はないようです。あげるとすれば、売上高には無い会社のほうが、若干、こだわりが強く、当期純利益については、労働組合が有る会社のほうが若干、こだわりが強い、ということでした。

また、どちらも経常利益に最もこだわっている、ということもこの表からわかります。そして、経常利益と当期純利益の間には10%以上の差がありました。この二つの数字の間には税金の支払いがあるだけではなくて、不良債権の処理や株式や債権の売却損益などがあります。労働組合の有無が、金融収支や特別損益の経営判断に影響を及ぼすのは小さい、ということが言えるようです。

また、原価や粗利益にはあまりこだわっていない、ということも表の左の項目から読みてとれます。営業利益から当期純利益までで、労働組合の有る企業は73%(約3/4)、無い企業は66%(約2/3)がこだわりをもっているようです。もともと長寿企業には保守的な企業が多いと考えられますが、労働組合のある企業は、無い企業よりも、それが若干、強くなっていることがわかります。
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