経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

家族主義

第69回 アンケート調査から見える長寿企業の平均像

7.家族主義と実力主義の違い

経常利益率が「赤字」と「2%以下」を利益率の低い会社と位置づけ、経常利益率を「家族主義」から「実力主義」の5段階で比較すると、「実力主義」の会社の利益率が悪いという調査結果が出ています。一方、「10%以下」と「11%以上」という利益率の高い項目を見ると、ここでも実力主義の会社の比率が高い。これらにより、実力主義の会社は経常利益率が高くなるか、低くなるか、経営成果が両極に振れることがわかります。
これは社員と会社の関係に起因しています。家族主義の会社では社員と会社の関係が安定しており、逆に、実力主義の会社では不安定で、社員の離職率や流動性が高いと考えられます。
一方、経営成果を「家族主義・やや家族主義」と「どちらとも言えない」と「実力主義・やや実力主義」の3つに分けて比較したところ、経常利益率を「10%以下」「11%以上」のところでは「どちらとも言えない」の経営成果が3番目になります。「どちらとも言えない」は社員と会社の関係が家族主義とも実力主義ともどちらとも言えない中途半端な状況にあり、そもそもそのような概念で社員と会社の関係について考えていないと思われます。よって、施策が時には家族主義的であったり、時には実力主義的であったりしているのではないでしょうか。このような状況で高い利益率を生みだしていくのは有効でないことがわかります。
経常利益率の安定的な比率を「3%以上」としてみると、ここでも「やや家族主義」がもっとも安定しています。逆に、「家族主義」と「実力主義」の項目の利益が安定していません。ここにも社員と会社の関係が経営成果として如実に反映されています。両極の「家族主義」や「実力主義」と明確に打ち出している会社では、社員がついていくのはたいへん。社員には「実力主義」も「家族主義」も「やや」がついているほうがいい。明確な実力主義も家族主義も社員には居心地がよくないのでしょう。
各主義ごとに過去10年の経常利益率がわかる表で、「家族主義とやや家族主義」の項目と、「実力主義とやや実力主義」を見ると、明らかに「やや家族主義」のほうが「10%以下」と「11%以上」の数値が高い。つまり利益率が高い。それは「家族主義」と「実力主義」の2項目を比較してもわかります。
さらに経常利益率が「3%以上5%以下」でも「やや家族主義」が最も経営が安定しています。逆に「家族主義」の項目が落ち込んでおり、前述のように「家族主義」もほどほどに、ということです。明確な「家族主義」は社員を窮屈にし、また成果の上がらない社員を入れ替えることがしにくいため、社員に緊張感がたらず、社員と会社がなれ合いになる恐れがあります。これで経営成果を上げてゆくのは厳しいことが読みとれます。
同業他社と比べる過去の収益状況を見ると、各主義によって経営成果に大きな違いが出ています。「やや家族主義」がもっとも安定しており、次に「どちらとも言えない」です。「やや実力主義」と「家族主義」は他社に比べて経営成果が低く、特に「実力主義」の項目は、極端に低くなっています。
このように、「家族主義」と「実力主義」は、社員と会社の関係を定義づけており、それらは経営の成果に色濃く反映されています。

第26回:家族主義と実力主義と、過去10年の経常利益の平均

家族主義と実力主義の違いと、過去10年の経常利益の平均について、関連性を見るために、カイ2乗検定(理論値と実測値の適合度合い)をおこなったところ、家族主義と実力主義の違いが、黒字年数比率について、有意な差はないということでした。
数値の上では、下記のようになりました。

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家族主義・実力主義の違いと、過去10年の経常利益の関係(タテ比率)

上記の表はタテを100%にして作成しています。この表を見ますと、赤字が最も多いのは「やや実力主義」のところで、「実力主義」と合計すると57.3%。つまり赤字企業はその6割近くが「やや実力主義」か「実力主義」を標榜しています。
一方、「やや家族主義」と「家族主義」をたしても赤字企業は14.3%。「家族主義」の会社に赤字企業はない、ということもわかります。
反対に、11%以上という良好な利益を上げている企業を見ると、35.6%が「家族主義」と「やや家族主義」、「家族主義」に0%というのが目を引きます。「やや実力主義」と「実力主義」を合計すると35.7%とほぼ同じ数字になります。この結果から、「実力主義」は高収益の企業もあるが、赤字企業も多い、という経営成果に大きなブレがあると言えます。一方、「家族主義」は赤字企業は少ないうえに、高収益企業もある、という結果になりました。まさか、こんなにはっきりと特徴が出てくるとは思いませんでした。これは何を表しているのでしょうか?
筆者は、社員と会社の関係が経営の成果を左右していると思います。

つまり、「家族主義」「やや家族主義」は社員と会社の関係は安定していることが予想されます。恐らく簡単に社員を切ったりはしない会社でしょう。反対に、実力主義の会社では社員と会社の関係はドライです。成果が上がらなかったら、配置転換や部署替えなどが起こっているのかもしれません。それを社員が発憤材料と捉えてくれたら会社は活力が出てきますが、逆に作用すると、社員の腰が落ち着かず、結果は思うように経営の成果が上がらない、ということになるでしょう。
また、ここで見逃しては行けない視点は、「家族主義」の会社に赤字と11%以上という企業がないことです。もともと「家族主義」という会社は少ないのですが、その中でも赤字と高収益の企業がないということは、大きなブレはないけれど、高収益企業もない、ということですから、「家族主義」もそこそこのほうがよい、ということでしょう。続きを読む

第25回:家族主義と実力主義

25回グラフ

家族主義、実力主義について、5段階に分けて聞いたところ、図のような結果になりました。家族主義とやや家族主義の合計は19.9%。実力主義とやや実力主義の合計は44.5%。1/5社が家族主義、約2社に1社が実力主義とみることができるようです。長寿企業は家族主義、というイメージが強かったのですが、意外に家族主義は少なく、実力主義が多かったことに驚きました。

多くの回答は経営者にいただいているので、「我が社はこうである」という自身の考え方を述べておられますが、その中には「我が社はこうありたい」という希望を述べておられるケースもあるでしょう。この家族主義と実力主義に他の要素を掛け合わせて分析すると、徐々に希望の部分が剥がれ落ちていくのがわかります。家族主義がよいのか、実力主義がよいのか。それについては、この後に続く分析で少しずつわかってきます。

温情的家族主義経営を標榜した鐘紡の中興の祖・武藤山治(慶応3年生まれ)は米国留学の経験をもち、米国の経営学者・テイラーの経営管理手法を鐘紡に導入して疲弊していた鐘紡を建て直しました。そして社員の福利厚生を厚くし、社内報を日本で最初に発行するなど、独自の経営手法と労使関係を築き、多くの会社に影響を与え、日本的経営の元祖と言われました。その後、子息・武藤糸治氏の跡を継いだ伊藤淳二氏の下で、鐘紡はカネボウとカタカナに社名を変えて業態転換を図りました。一時期は伊藤氏の経営がもてはやされましたが、内実ではカネボウの経営は粉飾にまみれ、2004年に倒産へと至ります。その伊藤氏は1987年まで日本航空の会長をしていました。

一方、現在、日本航空の会長をされている稲盛和夫氏は大家族主義経営を標榜されています。大家族=大きな家族という意味で、血縁の家族ではなく、他人同士でも家族のように喜怒哀楽を共にしてゆく、ということです。それを具体的な考え方としてまとめた「京セラフィロソフィ」、そして高度な管理会計を実現した「アメーバ経営」の二本立てで京セラという高収益企業を作り、それらの経営手法を導入した日本航空の2010年度決算は世界航空会社でトップの経常利益をたたき出し、V字回復の原動力になりました。

また、現代は米国MBA式の経営がもてはやされる時代でもあります。目標設定と管理会計を組み合わせたシステムで経営をするMBA方式に、家族主義的な考え方が入り込む余地はありません。

長寿企業の経営者達は、このような先人が経験した家族主義と、新しい時代の要請である実力主義の間で揺れ動いているのでしょう。その迷いが33.8%の「どちらでも無い」という3人に1人を生みだしているようです。
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