経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

売上

第37回:売上の拡大、維持に重要なこと

長寿企業には、長年取引をいただいている安定した取引先があると思っていました。長寿企業が顧客によって発展もし、顧客によって潰れもする、という考えをもっていることは、前回までに説明してきました。しかし、現在の顧客一辺倒ではないことが、この質問でわかります。

37グラフ

それはトップに「新規顧客の開拓」が28.4%を獲得しており、第2位に「新商品・新製品の開発」が26.3%で上がっていることからわかります。それらを合計すると54.7%になり、十分な過半数をとっています。つまり、新しい商品・製品を開発して、新しい顧客を開拓するという、既存の顧客だけではなく、まだ見ぬ顧客に目を向けていることがわかったのです。
答えの中にある「新しい流通の開拓」や、「新規取扱店の開拓」も新しい顧客の開発の一環として考えられるので、これらを合計すると、実に67.5%と2/3の企業が新規の顧客開拓をあげています。ということは、長寿企業はたいへん新規顧客の開拓に熱心であることがわかります。もっている顧客は砂のように流れ落ちてゆくことを経験的に理解していますので、現在の顧客を守っていくだけではやってはいけない、ということを歴史から学んでいるのです。

前回調査で、売り上げ好調時でも品質にこだわっている会社は50.5%社でした。それに今回の答えをあわせると、現在の商品で売上を増やすことを考えながら、つねに新商品を開発し、もって新しい顧客を開拓すると考えているようです。
長寿企業はつねに新規顧客開拓にいそしんでいる姿が浮かび上がりました。この取り組みが、実は長寿企業になる秘訣のひとつと言えそうです。

第36回:売り上げ好調時の商品量と品質のバランス

長寿企業は、売り上げと品質をどのように天秤にかけているのでしょうか。そのバランスをどのようにとっているのか、を聞いてみました。

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売上増大を重視は2.5%で、品質重視は18.4%。実に7倍以上の差があきました。やや売り上げ重視とやや品質重視は、14%と32.1%でこれも2倍以上となり、品質重視と売上重視の合計同士では16.5%と50.5%で、3倍以上になっています。圧倒的に品質重視が多くなっています。また、品質重視とやや品質重視の合計が50%を超えているのも長寿企業ならではと言えないでしょうか。さすが、という一言です。
ただ、気になるのはどちらとも言えないです。わずかの差ですが、この答えを選んだ企業が最も多かったわけですから、無視できません。
アンケートの前後に、何社かの長寿企業の経営者にインタビューをさせていただきました。売上と品質のバランスを聞くと、やはり「品質重視」と答えられます。全部で100年を超える企業の11社にインタビューをしましたが、上記グラフの比率なら1~2社は売上重視で、3社はわからないで、5社は品質重視と言われるはずですが、インタビューした11社すべてが品質重視と言われていたのは、印象的でした。
ある長寿の出版会社の経営者に、話を伺ったときのことです。

「やはり、出版社としては言論活動によって、読者を良い方向へ導くというのが、もっとも大事な仕事ですか?」という問いかけに、「当社がそれを主体事業としていたら、とっくに会社は無くなっていたでしょう。当社は、読者の役に立つデータを販売する会社であって、そのために長年蓄積をし、より使いやすい内容と方法で、読者に提供することを、第一の事業としてきました」

と明確に答えられました。これはそのデータの質そのものがメインビジネスであったと言われたもので、その説明には、たいへんな迫力を感じました。

反省を込めて、筆者の経験をお話しいたします。知り合いの紹介で当社で単行本を出版した著者に出版記念会の開催を提案し、発行直後に盛大に式典を行い、本のPRを開始しました。ところがその時点ではまだ、書籍は出たばかりですから、採算がとれるのかどうかわかりません。出版記念会が終わったとき、著者が「いやー、多くの方に来てもらったけど、多くの借りを作った。やるんじゃなかった」と言われたとき、筆者はあまりにガッカリして、「うちも儲かるかどうかわからないでやっているですから、そんなこと言わないでくださいよ」と、つい言ってしまったのです。それ以来、その著者とは疎遠になりました。ほんとうはにぎやかな出版記念会を行って、親しくなるはずだったのが真逆になりました。著者は「自分とは金儲けのために付き合っているだけなんだな」と見透かされたのでしょう。つい本音が出てしまって、それを聞き逃さなかった著者。当社が提供していた商品の品質は、完成した書籍だけではない、と日頃社員にいながら、こんな時にポロリと出てしまい、恥ずかしく、申し訳ない思いをしました。
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