経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

同族経営

第48回:過去10年の経常利益の平均と、後継者の人選について重要な事

過去10年の経常利益の平均と、後継者の人選について重要な事
48回_図表

後継者の人選についての考え方と、経営の利益率に関連性があるかどうかを見てみました。縦列で1位~3位の順位に大きな差はありませんでした。若干、「同族であること」を選んだ経営者の利益率が、他と比べて高めである、ぐらいのことでした。よって、後継者の人選の考え方と利益率には関連性はないと言えます。

これは「関連性がなかった」ということに意味があって、利益率の違い(会社の経営成果の違い)が、後継者の人選について影響はなく、ほかの考え方が影響している可能性があるということです。
ただ、予想できるのは同族が経営していて、一定の経営成果が上がっていれば、そのまま同族を続けることは可能ですが、経営状態が悪ければ社員達も「このままでいいのか・・・」という疑問をもつでしょう。
さらに経営が悪化していけば、いよいよ銀行も口を出してくるでしょう。支配同族を銀行が追い出したという実話は枚挙にいとまがありません。

第47回:後継者の人選で重要なこと

後継者の人選で重要なこと

同族であることが全体の29%で、反対の非同族であることは1%。合計すると同族であるかないかにこだわっているのは、全体の30%であることがわかります。1/3以下の社長さんしか、後継者について同族であるかないかに関心がない、というのは意外な反応でした。そして、同族であることが29%ですから、これも思っていたよりも少なかった。これが20年、30年の企業が答えているのではなく、平均144年の会社ですから、なおのこと驚きます。70%は同族の有無ではなく、後継者の人間力を問題にしています。統率力、人柄、指導力は合計で53.8%。過半数の社長は能力を重視しています。

第9回「取締役に締める同族の割合」では過半数の51.3%が同族の取締役でした。また、第10回の同族がもつ株式の比率では同族が76%(3/4超)を所有していました。ここから読めるのは、株式は所有したまま、経営者は徐々に同族ではなくなる傾向が強まっていく可能性があるということです。
ただ第45回にあるように、過去の平均144年にわたって、経営者は約80%が同族であった、という調査結果があります。理性的に考えると、後継者選びは同族にはこだわらないが、いざ後継の時代を迎えると、多くが同族者に落ち着くというのが実体のようです。

第45回:企業の経営継承力(1)――代々の経営者は同族か

代々の経営者は同族かどうかを聞いたところ、同族であったのは79.6%、同族でなかったのは20.4%でした。約80%の会社は平均144年の間、ずっと同族できた、ということです。そんなことが可能なのか、と改めて驚きます。ただ、ずっと嫡出子の直系できたのではないケースが多いようです。傍系家系(親戚筋)も取り込んで代をつないできたという話を聞きました。
また、創業者に兄弟が多く、その人たちも経営に携わっているとすると、二代目以降は兄弟姉妹(義理も含む)に社長の座が移ることになります。その時に、一気に株式の分散がおこり、兄弟姉妹は共同経営的な様相を呈してきます。創業者にしますと、身内が経営の要所を支えてくれれば安心です。また、利益共同体の一員同士で、本音の話し合いで経営の改善行動をとれるので、特に、初期の頃は助かること請け合いです。
そうするうちに創業者の子供世代が育ってくる。そのころには創業者の兄弟あたりが経営者になっているというケースがあります。兄弟に渡った株式は相続で、その子供世代(創業者の子供からするといとこ)が引き継ぎます。こうして親族の間に散らばった株式は、年と代を経るにしたがって創業者やその直系の後継者からどんどん遠ざかっていきます。

創業は明治維新前にさかのぼるある中堅財閥は、いまは非上場の不動産会社とリース業によって隆々としておられます。社長曰く「株主の中には、顔を見たことがない人がけっこういる。これをいつかは集めて、株式の整理をしなければいけない」。言うは易し行うは難し。この株式の整理はなかなか進まない、という話は今回の成功長寿企業の取材でたくさん耳にしました。
そのような経緯で、同族の中で広がり、拡散していく株式は一応、同族の支配下に会社があることを意味します。税務署の規定による「同族」とは、経営者の親族は6親等以内、結婚を縁とした姻族3親等内の経営の継承を同族経営と読んでいます。親族6親等はいとこのひ孫、姻族3親等は妻の弟の息子までが3親等です。これほどに広いと、一生会ったことのない人もたくさん出てきます。このような親戚筋から後継者を迎えているケースもけっこうあります。

2010年秋に取材をさせていただいた創業200年を超える企業では、途中で姓の違う2人の同族者が経営をつなぎ、8代目の社長に娘婿を迎えました。結婚した時、娘婿は別の会社に勤めており、まさか自分が妻の実家の家業を継ぐとは思っておられませんでした。妻もそのことに賛成ではありませんでした。しかし、社長である義父と娘婿の間が近づいていき、娘婿のほうから姓も会社も継承することを義父に提案されました。義父には娘が二人でしたから、渡りに船。トントンと話がまとまり、はや社長を継いで11年がたち、業績も順調で、こういう理想的な同族継承というのを見て、羨ましく思われる方もあるでしょう。
こういう養子をともなう経営の継承を「入り婿」といい、娘に商才のある婿をもらって経営を継承できることから、大阪の商家では女の子が生まれると、赤飯を炊いてお祝いをしたそうです。
今回のアンケートでもっとも年数の多い会社は396年です。昔のことはあまりに古くてわからないらしいですが、ずっと同じ姓の者が経営を繋いできたことは確かだそうで、いまの代表者もその姓を名乗っておられます。驚異的な経営の「継承力」で、この継承力は経営者ではなく、企業の生命力を源泉にしたパワーだと思います。

第29回:家族主義と実力主義の違いと、同業他社に比べた過去の収益状況の関係(タテ比率)

会社の代表者は、自社の利益の現状と見通しをつぶさに観察していますが、それは自社だけを見ているのではなく、同業他社との関係にも常に目と耳を配っています。ここでは前期の自社の利益率を聞いただけではなく、同業他社との比較を聞くことで、業界内での自社の位置づけをどのように見ているのか、を聞いてみました。前期の自社の成果だけではなく、客観的な評価も含まれていますので、興味深い結果が出ています。

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上記の表は、タテを100%とした表です。ここからは下記のことがわかります。
「実力主義」と「家族主義」はともに他社に比べて非常に高い利益率を出していると思っていない。

「家族主義」では非常に収益状況と答えた企業はないが、「実力主義」は1/3が非常に低いと答えている。同様に、「やや家族主義」に非常に低いはないが、非常に低いと答えた企業のうち2/3が「やや実力主義」の会社でした。ここには顕著な違いが現れており、予想の範囲内ですが、実力主義の会社は危機感を持って経営をしている人が多いので、「実力主義」になっているのかもしれません。前節で述べましたように、実力主義は遠心力の強い会社ですから、経営者の目も外に向いています。一方、「家族主義」の会社は、目が社内を向いているので、危機感は実力主義の会社よりも低く、業績よりも社員を守る、ということに重きが置かれている可能性があります。「実力主義」の会社は社員よりも、売上、利益で成長志向が強いので、逆に自社の経営成果は他社に比べて低い、と見ている可能性があります。

「実力主義」と「やや実力主義」を選んだ企業は全体の45%程度ですから、格段に多いというわけではありませんが、「家族主義」と「やや家族主義」を選んだ企業が全体の20%なので、「家族主義」の半分弱になっていることは考慮に入れておく必要があり、その影響はヨコ比率で端的に表れてきます。

第28回:家族主義、実力主義の経営成果の違いについて:総括

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前記の2回でタテ比率とヨコ比率それぞれを見て、長寿企業の特徴を分析しました。このテーマは今回のハイライトの一つですから、タテ比率とヨコ比率を総括しておきたいと思います。

上記では赤字から10%以下までの4項目で、「実力主義」のほうが数が多いことがわかりました。特に、2%以下のところで「家族主義」と「実力主義」の数値差が大きくひらきました。11%以上のところでは「家族主義」と「実力主義」とが同じ数値になっています。この表では、「実力主義」のほうは利益率が悪く、「家族主義」のほうがよいようです。もっともよいのは「やや家族主義」のところの数値が安定しています。赤字企業は「やや実力主義」がトップで、2位はどちらともいえない、でした。
11%以上の企業は、「やや家族主義」がトップで、「どちらとも言えない」と「やや実力主義」が2位。
「家族主義」と「やや家族主義」の赤字と2%以下の合計は31.4%、「実力主義」と「やや実力主義」の赤字と2%以下の合計は101.9%となります。
「家族主義」と「やや家族主義」の10%以下と11%以上の合計は58.9%、「実力主義」と「やや実力主義」の10%以下と11%以上の合計は77.5%となります。

ここからわかるのは以下のことです。
  1. 家族主義傾向の会社は、赤字を出す比率が低い
  2. 実力主義傾向の会社は、赤字を出す比率が高い
  3. 家族主義の会社の利益率は高くない
  4. 実力主義の会社の利益率は家族主義よりも高い会社が多い
  5. 実力主義の会社は、利益率が高いか、低いかもしくは赤字かというように極端に分かれる傾向がある
  6. 家族主義の会社は、利益率が低くもなく、高くもなく、中庸にくる
  7. やや家族主義の会社が最も高い利益率を確保している
  8. 2%以下の利益率の企業が最も多い
  9. 5%以下の利益率の企業が80.7%を占める。長寿企業の利益率は高くない
  10. 「10%以下」以上の利益を最も多く獲得しているのは「やや家族主義」で、25%の企業が5.1%以上を確保している
  11. やや家族主義と家族主義の5.1%以上の利益率は41.7%
  12. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は26.3%
  13. やや家族主義と家族主義の2%以下の利益率は98.9%(200%のうち)
  14. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は88%
  15. 家族主義のほうが利益率は高い。しかし赤字企業はない
  16. 「どちらともいえない」と「やや家族主義」を比較しても、「やや家族主義」のほうが利益率がよいのがわかる。
ここから言えるのは、「実力主義」「やや実力主義」より、「家族主義」「やや家族主義」傾向のほうが利益率は高く、経営の安定性があることです。また、「どちらとも言えない」よりも、「やや家族主義」のほうが利益率が高いので、中庸よりも、「やや家族主義」とするほうが利益率が高いことがわかります。これは本調査で得た気づきの一つであると考えられます。一般的には、実力主義のほうが利益率は高いと考えられてきたことを覆す結果となりました。
著者プロフィール

浅田厚志

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