経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

収益

第42回:過去の収益状況の同業他社との比較

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自社の収益状況は同業他社に比べて高いと思っているのが合計で32.8%。低いと思っているのが20.4%でした。長寿企業は同業他社に対して収益状況で少し自信をもっていると言えそうです。また、約半分の会社は同じ程度と思っている傾向も明確に出ています。では、収益状況の違いによる、同業他社との比較を見てみましょう。

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上記のうす色背景の部分は、正当な回答であることがわかります。2%以下の利益率は他社に比べても低いはずです。また、6%以上の利益率は他社に比べて高い、という評価をするのも、この低成長の時代ならわかります。しかし、左下のうす色背景はどう解釈できるのでしょうか。6%以上の利益率で他社よりも低い、と答えている13.3%の経営者は甚だ正直で有り難いですが、利益率の高い業界におられるようです。

次に、右上の濃い色背景ですが、2%以下の利益率でも他社よりも高い、というのは有るでしょうか。流通・卸売業で、取引金額の高い物品(たとえば鉄鋼や医療用器械など)を扱っているところは、売上高は高いけれど、もともと売上高に対する利益率は低く、売上の大きさで稼ぐというビジネスです。よって、1%前後の利益率が多い業界ですが、売上高はけっこうあります。
ただ、「非常に高い」で2%以下のところにある1社はどうもおかしいと思いますが、利益が出ているだけでも十分、多くの同業他社が赤字なのかもしれません。

長寿企業のコンペティターには長寿企業もあり、そうでない企業も含まれます。前回の利益状況と重ね合わせると、長寿企業がよい経営をし、同業他社をリードしている様子が見えてきます。

第37回:売上の拡大、維持に重要なこと

長寿企業には、長年取引をいただいている安定した取引先があると思っていました。長寿企業が顧客によって発展もし、顧客によって潰れもする、という考えをもっていることは、前回までに説明してきました。しかし、現在の顧客一辺倒ではないことが、この質問でわかります。

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それはトップに「新規顧客の開拓」が28.4%を獲得しており、第2位に「新商品・新製品の開発」が26.3%で上がっていることからわかります。それらを合計すると54.7%になり、十分な過半数をとっています。つまり、新しい商品・製品を開発して、新しい顧客を開拓するという、既存の顧客だけではなく、まだ見ぬ顧客に目を向けていることがわかったのです。
答えの中にある「新しい流通の開拓」や、「新規取扱店の開拓」も新しい顧客の開発の一環として考えられるので、これらを合計すると、実に67.5%と2/3の企業が新規の顧客開拓をあげています。ということは、長寿企業はたいへん新規顧客の開拓に熱心であることがわかります。もっている顧客は砂のように流れ落ちてゆくことを経験的に理解していますので、現在の顧客を守っていくだけではやってはいけない、ということを歴史から学んでいるのです。

前回調査で、売り上げ好調時でも品質にこだわっている会社は50.5%社でした。それに今回の答えをあわせると、現在の商品で売上を増やすことを考えながら、つねに新商品を開発し、もって新しい顧客を開拓すると考えているようです。
長寿企業はつねに新規顧客開拓にいそしんでいる姿が浮かび上がりました。この取り組みが、実は長寿企業になる秘訣のひとつと言えそうです。

第35回:創業時の販売商品の現在の売上比率

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いまも創業時の商品を扱っているが、売上の1/4未満という会社が全体の1/3、110社を占めていました。次に、全く扱っていない会社は96社の3割に上ります。合計の206社は全体の2/3におよびます。そしてこれらの会社は創業時の事業内容を今日に至る間に変えたと言えるでしょう。

現在の取り扱いが0%は、当然、事業内容が変わっていますが、売り上げの25%以下は、創業時の商品が売り上げに貢献はしているけれども、事業の柱ではない、と言うことです。他に柱になる事業があり、会社は75%を占める他の事業に経営実態をあわしています。万が一、75%の売り上げに何かがあれば、会社の存亡に関わるからです。

アンケートをいただいた後に取材をしたある長寿企業は、創業時には団扇や扇子を作っていましたが、時代の遷移と共に事業内容を見直し、今はカレンダーを製造する会社になっておられます。この二つには印刷物であるという共通はありますが、なぜ、カレンダーにという疑問は解けませんでした。現在、3代目の経営者はそのことを明確に説いてくれました。

「団扇は企業などが自社の名前を刷り込んでお客様に配ったり、花火大会の時に宣伝で配っておりました。その企業にとっての宣伝メディアということなら、カレンダーも同じです。企業から注文を受けて、社名を刷り込んでお渡しする、というビジネスの基本の流れは同じです」

このアンケート結果で意外だったのは、2割近くの57社がまだ76%以上の売上が創業時の商品ということでした。弊社のように、創業からまだ27年の会社でも、創業時の商品(企業経営者の自叙伝の出版)というビジネスは、いまではほとんどなくなっております。そして、その後の単行本の出版というビジネスも、いまでは売り上げ全体の2割ほどとなり、すっかり社史やアーカイブの売り上げが席巻するようになりました。いわば創業時からすると、2回、ビジネスモデルを変更したと言えます。
そのように短期間で事業内容を変化させてきた経験から、100年以上たった今でも、創業時の商品が売り上げの75%以上を占めているというのは、ほんとうに素晴らしい商品に恵まれ、うらやましい限りです。創業者に先見の明があったことと、後を引き継いだ代々の経営者が、時代に合わせながら、マイナーチェンジをしてきた結果、現在にも商品が残っている、ということでしょう。

前に、伊勢の赤福餅の代表者の話を読んだことがありました。それによると、赤福餅も時代に応じて、少しずつ味を変えてきたそうで、そうしたからこそ、今日に残っているという話でした。不易流行――変えるものと、変えないもの。経営者の判断の重要性が、あらためて思い知らされます。

第33回:経営を危うくする事柄は何か

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長寿企業は、長い年月の間に知恵が引き継がれています。そのもっとも大事な知恵は何でしょうか。それは自社を守る知恵です。それは長寿企業ならずとも、大事な知恵でありますが、長寿企業は歩んできた歴史の中で、代々に伝わっていることがあるはずです。
自社が成長、発展してゆくのはたいへんありがたいことですが、それよりも大事なのは、自社の経営が継続することです。長寿企業の価値観の根幹はここにあります。
そこで「経営を危うくする事柄は何か」という質問をしたら、上記の表のような答えが返ってきました。

圧倒的に「販売先の業績悪化」が上がっています。販売先とは、商品を売った先であり、一つの会社や一つの店という場合があります。販売先の経営危機は、売り掛け金を回収できなくなるおそれがあり、もし取り立てできないとなると会社の屋台骨が揺らぎます。販売先は直接の顧客ではなくて、卸しや販売代理店の場合もあります。卸していた販売代理店が経営危機に陥ったら、連鎖倒産する可能性が出てきます。特に、1990年代まではまだ多くの手形が流通しており、長寿企業でも手形を使ってきたことでしょう。手形は連鎖倒産を生みやすい取引形態ですから、よくよく注意をする必要がありました。

長寿企業は、長い歴史の中で、取引先や周辺企業がどんどん倒れていく様を見てきました。1955年(昭和30年)~2009年(平成21年)までの54年間で、毎年平均で11,830社が倒産してきました。累計で638,700社になり、日本で稼働していると言われる企業が200万社ですから、32%の企業が倒産してきたことになります。しかも、これは信用調査会社が倒産を把握した企業に限られており、実体はさらに多くの企業が倒れています。
自社内の問題によって倒産するのは「力不足であった」と納得できるかもしれませんが、販売先が倒産したあおりをくって自社も倒産の憂き目にあうのは納得できないでしょう。
そこから長い経営年数の間では、販売先の経営状態に注意を払う必要性をもっとも強く感じているということです。
ただ、このことは営業の現場や口伝えとしては伝承することは可能ですが、社是や社訓には書きにくいことです。社是、社訓は、良いことを言っているので、明文化して店や会社の壁に飾ることができます。しかし、「売り先の経営に目を光らせろ」とは書けません。
よって、長寿企業は販売先の経営状況や売掛金の回収には、非常に気を遣ってきたことでしょう。また、一つの会社に売り上げを偏らせない、ということも考えてきました。小会社は別にして、一社の売り上げに依存するような経営をしてきたら、とても100年はもたなかったはずです。よって、いかに売り上げを多くの会社からいただいて、経営を安定させるかは、経営を長らえるのに不可欠な考え方です。
グラフでは、その他が2番目に多くの数値を集めています。この内容を見てみると、千差万別でした。その中でも「市場の変化」が最も多く、ほかには「内部分裂」「大震災」「法規制」「過剰な設備投資」「社員の高齢化」「景気」「クレーム」などがあげられていました。

第30回:家族主義と実力主義の違いと、同業他社に比べた過去の収益状況の関係(ヨコ比率)

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ヨコの比率からは、各主義のヨコ列を100%として、各々の企業が自社の収益状況を他社と比べてどう見ているのかが、各収益状況ごとにわかるようになっています。

この表によると、「家族主義」では非常に低いと、非常に高いはゼロです。一方、「実力主義」では非常に低いがわずか4%ほど有りますが、ここは余り差がないと言えるでしょう。「やや家族主義」と「やや実力主義」を比較してみます。非常に低いと非常に高いではあまり差は有りません。また、低い、高いのレベルでもあまり差は出ておりません。

家族主義とやや家族主義の高い、非常に高いを足すと66.1%と高い数値が出ます
実力主義とやや実力主義の高い、非常に高いを足すと69.4%と上記との差はあまりありません。
家族主義とやや家族主義の低い、非常に低いを足すと53.6%
実力主義とやや実力主義の高い、非常に高いを足すと43.6%

これによると、やや家族主義のほうが、他社に比べて低いと考えています。しかし、実体は先の項目「過去の10年の経常利益平均」では実力主義のほうが他社に比べて低いことがわかっていますので、実績と比較とはずれがあることがわかります。
また、家族主義、実力主義とも、どちらとも言えない企業のうち、業界他社と同程度の利益と考えている企業は全体の50%です。中庸の企業は、業績も中庸と考えている節がありそうです。
では、この表の中でいずれの数字が突出しているかというと、「家族主義」の低い、という37.5%と、同じく「家族主義」の同程度の25%です。「家族主義」の会社は自社は、他社に比べて収益状況は低いと思っている企業が、他の主義の会社よりも多くあります。
また、高いと非常に高いを選んでいるのは153.2%と13.2%で合計が166.4%です。一方、低いと非常に低いの合計は116.2%ですから、長寿企業は他社に比べて、自社の業績は高いと考えている企業が多いことがわかります。
長寿企業の競合先はたいてい非長寿企業ですので、そういう企業と自社を比較して高いと見ているのは、長寿企業の素晴らしさの現れと考えられます。

さて、各主義ごとの収益性の実績と、他社との比較を読まれた経営者は、もしかすると、実力主義を止められるかもしれません。ここまではっきりと、「実力主義・やや実力主義」の会社の業績は、「家族主義・やや家族主義」の収益状況よりもよくないと出ているからです。そして「やや家族主義」を上げている企業の業績が最も安定して収益を上げていることもわかりました。
この「やや家族主義」というのが、どういうものなのか。各経営者で受け取り方は若干違ってくるかもしれません。筆者の理解は以下の3つです。

・社員の雇用を守ることが大事だと考えているが、最大の優先事項ではない
・経営に多少の波乱があっても、社員の首を切らない
・赤字を出さない経営を社員の努力と協力を得て、必ず実行する

このように考えている経営者の企業が「やや家族主義」の会社ではないかと思います。これにより、会社と社員の関係は安定しており、ギスギスした感じはないでしょう。結果、業績も安定的に推移していると言えるようです。
これからの自社の社員と会社の関係をどのようにつくっていくのか、それを考える参考にしたいと思います。当社ではさっそく「やや家族主義」宣言をしまして、社員と会社の関係の方針に据えました。具体的には、社員旅行を年に1回は行う。正社員は基本的には会社から解雇はしない。
収益性が低くなっても、社員の雇用を守る。ただし、赤字を出してまでそれをすることはできないので、絶対に赤字は出さない経営を経営陣と社員は最優先で行う、ということです。
そのような「やや家族主義」的な経営を目指してゆきたいと宣言し、今後さらに会社と社員の一体感を醸成したいと社員に話をしました。
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