経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

労働組合

第66回:アンケート調査から見える長寿企業の平均像  

4.長寿企業に労働組合はどのような経営成果をもたらしているか

労働組合がある企業の同族性で特徴的なのは、労働組合が有る会社の株式同族比率(全株式に対する経営者の同族者・社がもつ株式の比率)が50%以下の会社が最も多いということです。対照的に労働組合があり、株式同族比率が51%を超えている会社が最も少ないことです。今回の調査対象企業はすべて非上場会社ですが、労働組合を有する企業は、株式保有比率ではもはや同族支配から抜け出している会社が多くあります。ただし、同族の支配の有無は別問題です。
労働組合が有る会社は無い会社よりも、若干、利益に対するこだわりが強い。また有する会社は自己資本比率により強い関心があり、無い会社は流動資産と流動負債について関心が高い。労働組合が無い会社は、会社の現金および現金化できる資産がいくらあるのか、逆に、どれほどの借金があるのか、という資本の流動性を重視しており、会社の安全性への関心は、若干、労働組合を有する会社を下回わります。
労働組合の有無と過去10年の利益率を見ると、有する会社は経常利益率が3%以上の会社が65%を占めていますが、無い会社は55.7%で約10%の差があります。経営は組合を有する会社のほうが安定していますが、一方、赤字企業の率は7.2%と無い会社の18倍です。また、11%以上の利益を上げている会社は、組合が無い会社は有する会社の4.8倍です。
ここからわかるのは、労働組合を有する会社の経営は経常利益率が3%~10%の範囲内で安定していますが、高い利益率を会社に許す風土はなく、逆に赤字が出ても止められない傾向があります。無い会社は2%以下の低率な経常利益率の会社が多くありますが、高利益をたたき出す会社もあり、赤字を出す会社はまれということです。

第28回:家族主義、実力主義の経営成果の違いについて:総括

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前記の2回でタテ比率とヨコ比率それぞれを見て、長寿企業の特徴を分析しました。このテーマは今回のハイライトの一つですから、タテ比率とヨコ比率を総括しておきたいと思います。

上記では赤字から10%以下までの4項目で、「実力主義」のほうが数が多いことがわかりました。特に、2%以下のところで「家族主義」と「実力主義」の数値差が大きくひらきました。11%以上のところでは「家族主義」と「実力主義」とが同じ数値になっています。この表では、「実力主義」のほうは利益率が悪く、「家族主義」のほうがよいようです。もっともよいのは「やや家族主義」のところの数値が安定しています。赤字企業は「やや実力主義」がトップで、2位はどちらともいえない、でした。
11%以上の企業は、「やや家族主義」がトップで、「どちらとも言えない」と「やや実力主義」が2位。
「家族主義」と「やや家族主義」の赤字と2%以下の合計は31.4%、「実力主義」と「やや実力主義」の赤字と2%以下の合計は101.9%となります。
「家族主義」と「やや家族主義」の10%以下と11%以上の合計は58.9%、「実力主義」と「やや実力主義」の10%以下と11%以上の合計は77.5%となります。

ここからわかるのは以下のことです。
  1. 家族主義傾向の会社は、赤字を出す比率が低い
  2. 実力主義傾向の会社は、赤字を出す比率が高い
  3. 家族主義の会社の利益率は高くない
  4. 実力主義の会社の利益率は家族主義よりも高い会社が多い
  5. 実力主義の会社は、利益率が高いか、低いかもしくは赤字かというように極端に分かれる傾向がある
  6. 家族主義の会社は、利益率が低くもなく、高くもなく、中庸にくる
  7. やや家族主義の会社が最も高い利益率を確保している
  8. 2%以下の利益率の企業が最も多い
  9. 5%以下の利益率の企業が80.7%を占める。長寿企業の利益率は高くない
  10. 「10%以下」以上の利益を最も多く獲得しているのは「やや家族主義」で、25%の企業が5.1%以上を確保している
  11. やや家族主義と家族主義の5.1%以上の利益率は41.7%
  12. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は26.3%
  13. やや家族主義と家族主義の2%以下の利益率は98.9%(200%のうち)
  14. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は88%
  15. 家族主義のほうが利益率は高い。しかし赤字企業はない
  16. 「どちらともいえない」と「やや家族主義」を比較しても、「やや家族主義」のほうが利益率がよいのがわかる。
ここから言えるのは、「実力主義」「やや実力主義」より、「家族主義」「やや家族主義」傾向のほうが利益率は高く、経営の安定性があることです。また、「どちらとも言えない」よりも、「やや家族主義」のほうが利益率が高いので、中庸よりも、「やや家族主義」とするほうが利益率が高いことがわかります。これは本調査で得た気づきの一つであると考えられます。一般的には、実力主義のほうが利益率は高いと考えられてきたことを覆す結果となりました。

第27回:家族主義と実力主義と、過去10年の経常利益の平均:ヨコ比較

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 前回のタテ比率と違って、各々の主義の会社には、どういう経営成果の会社が多いのか、というのがわかる図・表です。一つずつ見てみましょう。

「家族主義」の会社は赤字の会社はありませんが、2/3は0.数%~1.9%の範囲にあります。よって、利益率のよい集団とは言えません。
一方、「実力主義」の会社は2%以下に4割があり、5%以下にも4割を超える企業があります。相対的に「家族主義」のほうは低く安定しており、実力主義はよい企業とよくない企業のバラツキがあり、「家族主義」よりは若干高めの経営成果を上げている、と言えそうです。
「やや家族主義」では、73.3%が2%以下と5%以下のところにあり、「やや実力主義」では79%がその範囲にあります。そして10%以下と11%以上では「やや家族主義」が25%,18.4%が「やや実力主義」でした。そして、赤字企業は「やや実力主義」のほうが少し多かったようです。これらを見ると、「やや家族主義」のほうが経営成果は高く、経営が安定していると言えそうです。

筆者は、経営の力学によく遠心力と求心力という例えを使います。遠心力は外に拡がろうとする力ですから、会社が売上や企業の規模が拡大する力のことです。求心力は逆に、中心に向かおうとする力ですから、最終損益に向かっていくので必ずしも売上の拡大を望んでいるわけではありません。家族主義は求心力、実力主義は遠心力と考えられますので、やや求心力が強いぐらいが経営成果としては安定していると言えそうです。しかし、あまりに求心力が強いとそれも困りまして、低成長低利益体質になってしまいます。つまり、社員の雇用を守ることが第一優先になって、会社の利益よりも強い存在意義になります。それは素晴らしいことではありますが、やはり会社としては伸びない。いずれじり貧になってしまう可能性もあります。
このようなことから、「やや家族主義」=やや求心力の強い会社、ぐらいがちょうど経営の進展には適当であることが、この数値から読みとれます。

第15回:長寿企業における労働組合の有無と家族主義・実力主義の関係

グラフ

上記の表を見ると、「実力主義・やや実力主義」の合計は労働組合の有無に関係なく、45%となっています。長寿企業では労働組合の有無に関係なく、約半数が「実力主義・やや実力主義」を標榜していると言うことです。労働組合は雇用を守る、社員はみな平等を標榜しているはずですから、ちょっと驚きの調査結果でした。

労働組合の有無による差は、どちらでもないから左の方に出ています。「家族主義・やや家族主義」の合計は17%と22%で、若干の違いが見られます。その差の5%はどちらでもない、に充当されていますので、労働組合の有る企業よりも、無い企業のほうが、わずかに家族的と出ていますが、有意な差と言えるほどではありません。
労働組合があると、会社と従業員の間に「労使」という関係が強まります。また、会社の中には、代表者と経営陣、組合員ではない管理職と、組合員ではない一般社員と、組合員の一般社員、その他非正規労働者の人たちといういくつかの層ができます。よって、いろんな層に配慮した人事制度が必要になってくると同時に、誰が見ても公平と思われる組織制度が社内で台頭してくるのは、自然な流れでありましょう。

それにしましても、今回の調査は創業100年以上の企業であり、平均では坂本龍馬が活躍していたころから継続している企業なので、歴史と年功、「継続は力なり」が抱負と思ったおりましたが、約半数が「実力主義・やや実力主義」と答えられていることが何よりの驚きでありました。

第14回:長寿企業における労働組合の有無と貸借対照表(BS)のこだわり第1位


長寿企業で、労働組合のある企業と無い企業には、貸借対照表へのこだわりに、何か有意な差があるかどうかを見たアンケート結果です。

これを見る限り、大きな差はないようです。あげるとすれば、流動負債に対して有る企業が3%、無い企業が11%。ここに若干の差があります。流動負債の多くは有利子負債ですから、労働組合の無い企業は、若干、有る企業よりも、有利子負債への関心が高い、と言えそうです。
一方、流動資産への関心も、無い会社のほうが6%高いようです。流動資産は現金または、1年以内に現金化できる資産のことですから、いわば手元の資金といってよいでしょう。無い会社は、手元資金の確保をより重視しており、その反対の有利子負債の多寡にも関心が高いということです。
これは労働組合の有る企業の平均社員数が509名、無い企業の平均社員数が123名ですから、企業規模にも関係がありそうです。

関心が高いのは、なんと言っても自己資本比率です。どちらも過半数を占めています。資本(資金)的に独立しているかどうか。これは労働組合の有無に関係なく、ダントツに高いと言えそうです。7%の誤差が出ていますが、59と52ですから、有意な差と言えるほどではないようです。
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