9.経営者の構造化調査のまとめ                                

1)経営危機の内容                                    
会社の危機は、内部でのトラブルと外部からの圧力の大きく2つに分かれます。前者は人の問題で、かつほとんどは経営者自身に何らかの問題が発生した場合でした。経営者の資質の問題、向き不向きの問題、そして内輪もめなどです。
後者は、平均で144年の経営年数があるので、明治維新から関東大震災、太平洋戦争、数々の大型台風や経済危機、阪神・淡路大震災などの災害が上がっています。多くの場合、自然災害に備えることはできません。しなければならないのですが、東京電力でも、できていませんでした。
会社が大きなダメージを受けたときのことを考えて、内部留保を厚くしておくしかないでしょう。国の政策変更や戦争については、その時から商売替えをするか、一時的に商売替えすることも得策なようです。
日米繊維交渉の結果、繊維や生糸の輸出が制限されることになった時、企業や産業の実力とは無関係に、経営が先細りすることが明白になりました。生糸会社や紡績会社は縮小しながら徐々に転・廃業するか、倒産するしかありませんでした。かつて日本企業ランキングNo.1を長年にわたって占めた鐘紡はその1社で、紡績から化粧品を扱うようになって、成功しているかのようでしたが、その後の顛末はご存じの通りです。
また、製糸業界でも、事業にその痕跡を残しながら、株式を上場し、立派に継続している企業があります。グンゼです。1896年に製糸業を開始し、その事業は1987年までの約90年間、継続しました。縮小することが決まったときから、多角化路線に舵を切り、製糸に関連した繊維事業のアパレル製造、フィルム製造などを手がける機能ソリューション事業、そしてスポーツクラブなどを手がけるライフクリエイト事業を展開しています。売上高では、いまもアパレル製造が全体の53%を占めています。しかし、3事業部の中で利益率は最も厳しいようです。製糸企業が次々と縮小してゆく中で、いまも2,000名を超える従業員を抱え、1,300億円を超える売上を上げているのは瞠目に値します。
危機をどのように克服したのか。戦争はその進展がわかるので、大事なものは疎開させた、という会社もあります。それが戦後に、事業を再スタートさせる大きなきっかけになった会社もありました。
各経営者が異口同音に会社の経営危機とその克服法について語るのは、多くの場合、会社は内部に危機の芽があるということです。震災や戦争という天変地異に遭遇した会社は不幸ではありますが、それほどの大きな災害は1人の経営者が経営している間に何度も発生するわけではありません。しかし、会社は常に内部においてさまざまな矛盾を抱えています。それはもともと矛盾をもっている人間が集まった組織だから、致し方がありません。 
大事なのは、そこに自浄作用が働いているかどうかです。それがないとどうなるか。経営者が驕り、社内で不正が発生し、社員の中に派閥ができて意志疎通が悪くなり、同族に会社を私物化されて社員がやる気をなくす。取材をした会社でも、そのような問題が多く聞かれました。それに対して、どのように対処したのか。採り上げた企業はそれらへの対処に成功したから、今日がありました。