経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

事例

第34回:長期に維持・発展してきた要因は何か

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長期に維持・発展してきた要因を聞いたところ、第1位は取引先との関係と答え、第2位には商品力、第3位は営業力という答えでした。製品や商品の善し悪しよりも、取引先との良好な関係を維持してきたことが最大の要因としてあげられています。ここでは前回の質問「経営を危うくする事柄」の答えの第1位が「取引先の経営悪化」と答えていますので、この二つの答えは表裏一体になっているといえます。長寿企業は発展するのも、経営を危うくするのも、「取引先との関係」にあると考えています。よって、取引先に長くお取引をいただく、かわいがっていただく、ということが大事になってきます。

大阪の武田薬品工業は創業から230年を経ていながら、日本の製薬業界最大手として挑戦的な経営でいまも成長を続けている会社ですが、武田家の家訓として残っている言葉の代表例は「運鈍根」です。
」は商売がうまくいったときには実力とは思わず、運が良かったと考えよ、という謙虚な心を求めるものです。「」は商売は地道に、根気よく取り組んでこそ花も開くと言います。そして「」ですが、これは読んで字のごとく、「鈍い」「のろい」「愚か」であることを求めています。医薬品製造業というのは研究、開発が事業の重要ポイントです。そこには国内外からいろんな知識を取り入れて、勉強と研究が求められます。しかし、武田では「鈍」であることを求めます。それはなぜでしょう。
弊社では、武田薬品工業の英文120年史と(財)武田科学振興財団の年史の編集をさせていただいており、その編集過程で学んだことですが、「お客様にかわいがっていただくには賢そうに振る舞うな。愚鈍なぐらいで、長い長い歳月の間、かわいがっていただくことが大事なのだ」ということです。「鈍」は自らのあり方ではなく、顧客との関係を言っているのでした。
愚かそうに振る舞ってでも、お客様に媚び、へつらってでも、長いお取引をいただいてこそ、商売は成り立つ。知っていることでも、知らない振りをするぐらいがちょうど良い。こうまでしてでも、一度つかんだお客様は離さないということです。さすが230年の歴史の中で培われた知恵であろうと思いました。

第31回:成功事例と失敗事例の共有

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共有してきたとやや共有してきたの合計は65.4%となり、2/3になりました。成功事例の共有は、仕組みを作っているほどではないとしても、多くの企業でされているようです。成功例というのは、目立ちますし、業績に如実に反映し、しかも成功であることを当事者達も吹聴するでしょうから、おのずと共有化されるケースがあると思います。

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一方、失敗事例については、成功事例よりもやや落ちました。共有してきたとやや共有してきたの合計は60.2%でした。失敗事例というのはやはり共有しにくいものです。とくに、それが代表者やオーナーの家族が絡んでいる場合はなおさらです。それでも60%を超えているのは立派と言えるのではないでしょうか。
特に、失敗事例の共有というのは、そこから学び、二度と繰り返してはならない、ということは重々わかってはいるのだけれど、汚点を残す、というのはやはりやりにくいものです。また、会社と経営者に謙虚さと自信がないとできないことであります。
それでも成功事例と失敗事例の「共有化してこなかった」というのは思っていたよりもはるかに数値が低かったので、安心したと言うか、喜びました。

東京にある、創業397年の会社の代表者(同族で17代目)にインタビューをしたとき、その方は成功例はもちろん、失敗例もすべて開示し、共有化していると答えられました。「すべて」というのはなかなか言えないことですし、できないことです。しかし、他の社員さんがおられる前で、明確に答えられましたので、偽りのないことです。ほんとうに立派な経営者だと思いました。
この成功例と失敗例の共有をしている率の高さは、長寿企業になるための、ひとつの秘訣であると考えられます。
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