経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

老舗企業の研究

成功長寿企業への道、出版のお知らせ

この度、「成功長寿企業への道」blogが書籍となって出版されることとなりました。
本blogに掲載されている内容に加筆修正を加え、図表やデータも見やすく整理しております。
タイトルも『成功長寿企業への道』となります。

cover


書籍の内容ですが、様々なデータと考察を83の項目で紹介しております。
以下、目次の中をご紹介します。

【目次】
第1章 成功長寿企業とは何か
第2章 成功長寿企業の経営スタイル
第3章 成功長寿企業の同族性と継承力
第4章 成功長寿企業と家族主義・実力主義
第5章 成功長寿企業と経営の6要素
第6章 成功長寿企業と社員持株会
第7章 成功長寿企業と労働組合
第8章 成功長寿企業の特徴
第9章 成功長寿企業社長10人の言説から特徴を捉える


成功長寿企業への道(浅田 厚志 著)
定価:2,100円
2012年12月20日完成
四六判, 240頁, 並製


となっております。

今回、ブログをご覧の方限定で、先行販売いたします。1月10日までにご予約いただいた方には、定価2,100円から2割引きの1,680円でご購入いただけます。12月25日より順次発送いたします。
ご興味のある方は、是非この機会にご予約下さい。


先行予約は終了しました。
Amazonや書店でもご購入いただけますので、ご興味のある方は是非お買い求め下さい。

第84回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

3)キーコンテンツの分類と経営の6つの要素

経営者の構造化調査の内容から各項目ごとに、重要なポイントを述べている箇所を抽出して、それを経営の6つの要素で分けました。結果は以下のようになりました。

ヒト:25  モノ:16  カネ:20  技術:17  情報:13  経営哲学:33

長寿企業が経営を長らえるのに、どのような問題があって、いかに克服してきたのか。それらの問題の起点が何になるのか。その解決の方途は6つの経営要素の中で、何に関わるのか、という点で分けたものです。件数だけを見ると、経営哲学が最も多くなりました。これは長寿企業の経営の継続性を聞いている質問が主体でありましたので、そのような結果になることは予想できました。
ヒトと経営哲学というのはかなり近い要素です。経営哲学を作るのはヒトですが、それを普遍化し、洗練させ、維持・継続してゆくのは個人ではなく企業です。あくまでも個人の考え方であり、問題意識であるならば、ヒトに従属させているので、ヒトそのものに問題の焦点があります。
ここから言えるのは、経営者達が述べる「長寿企業の経営に大切な要素」では経営哲学が最も大事であり、次にヒト、そしてカネが3番目にきました。ヒトというのもほとんどが経営者に帰結する問題なので、仮にヒトと経営哲学を合計したら58になり、これは全体の47%に上ります。約半数がヒト、つまり経営者のあり方と経営哲学に、長寿企業が経営の継続性の重要ポイントを置いていることがわかります。

84回まで続いてきたこのブログですが、今回で一区切りを迎えさせていただくこととします。
来月、11月には経営史学会で、筆者が「社史の可能性」について研究・発表をおこないますが、それは今回の長寿企業の研究と、経営する出版文化社の750点ほどの社史の制作経験から導き出された発表内容です。
この後は、ここに執筆したブログを再編集して、添削をし、1冊の書籍にまとめて出版いたします。そして、11月に発表する社史の研究についても、続けて書籍にまとめて、出版いたします。どうぞ、このブログで関心を持っていただきましたら、ぜひ、引き続きご厚誼をいただきますよう、お願い申し上げます。
長い間、お読みいただき、ありがとうございました。
皆様の経営が、一年でも、一日でも長く継続し、お客様、社員様とのご関係が末永く続いてゆきますことを、心から祈念し、擱筆いたします。

浅田厚志

第83回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

2)自浄作用があるか
                                    
まず上げられるのは、経営者が交代したことです。会社にとっては、これほど大きな改革はありません。その時に、同族役員なども退任させています。それを契機に、同族役員を半数以下にするという改革をおこなった会社もありました。次に大きな改革と言えるのは、人事制度の刷新です。退職金を辞め、年俸制に切り替え、残業をなくすなど、大鉈を振るったケースがありました。
長い経営年数に生き残るには何が必要なのか。それは経営哲学であるというのが、大半の答えでした。長寿企業は企業としては大木に育っています。その根っこに当たる部分が経営哲学です。目には見えませんが、その根が地中でしっかり張られていれば、時代の変化としての風や嵐が来ても倒れません。根が短かったり、腐っていると、地上の図体が大きいだけに、たちまちのうちに倒れてしまいます。経営哲学をしっかりと作り上げ、社員と共有できているかどうか、ここに注力しているのが長寿企業でした。
ただ、立派な経営哲学を作り、社員との共有化と浸透を図ることを仕組みとして取り入れて、間断なく行ったとしても、経営者が悪るければ、元の木阿弥です。もっとも自浄作用が働かなければならないのは経営者自身の人間性です。「会社は売上のためにある」と考えず、「社員は利益のために働いている」と捉えてはならないのですが、時として、そのように流されることがあるのも、経営者も人間であることの一面です。
長年の経営に生き残れた理由に、「カネ」がひとつも上がっていません。第一に上がっているのは「ヒト」です。カネは生き残るための道具ではありますが、一過性のものです。カネが順調に入って出ていき、いくらかが滞留してゆく仕組みを作る必要があります。単に、ビジネスモデルではありません。ビジネスモデルには経営哲学が含まれません。ビジネスモデルに経営者の経営哲学が加わり、それに賛同する社員が集ることが、そのビジネスモデルを長期間にわたって、順調に回していく必須条件になります。
そのためには、経営者の人間性と人生観がつねに自浄され、会社と共に進化してゆくことが必要です。これが経営者の構造化調査でわかったことでした。
この経営者の自浄作用のほかに、もう一つ上げておくのは、商品に恵まれることです。長期経営をするには長きにわたって、商品が生き続けることが前提です。継続性のある分野を選び、持続力のある商品をつくること。そしてその品質を落とさず、あるいは磨きをかけてゆくことが大事です。短期間の好不況で売上が変わる商品では、長期経営がおぼつきません。近年の企業の盛衰を見てもよくわかることです。

第82回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

9.経営者の構造化調査のまとめ                                

1)経営危機の内容                                    
会社の危機は、内部でのトラブルと外部からの圧力の大きく2つに分かれます。前者は人の問題で、かつほとんどは経営者自身に何らかの問題が発生した場合でした。経営者の資質の問題、向き不向きの問題、そして内輪もめなどです。
後者は、平均で144年の経営年数があるので、明治維新から関東大震災、太平洋戦争、数々の大型台風や経済危機、阪神・淡路大震災などの災害が上がっています。多くの場合、自然災害に備えることはできません。しなければならないのですが、東京電力でも、できていませんでした。
会社が大きなダメージを受けたときのことを考えて、内部留保を厚くしておくしかないでしょう。国の政策変更や戦争については、その時から商売替えをするか、一時的に商売替えすることも得策なようです。
日米繊維交渉の結果、繊維や生糸の輸出が制限されることになった時、企業や産業の実力とは無関係に、経営が先細りすることが明白になりました。生糸会社や紡績会社は縮小しながら徐々に転・廃業するか、倒産するしかありませんでした。かつて日本企業ランキングNo.1を長年にわたって占めた鐘紡はその1社で、紡績から化粧品を扱うようになって、成功しているかのようでしたが、その後の顛末はご存じの通りです。
また、製糸業界でも、事業にその痕跡を残しながら、株式を上場し、立派に継続している企業があります。グンゼです。1896年に製糸業を開始し、その事業は1987年までの約90年間、継続しました。縮小することが決まったときから、多角化路線に舵を切り、製糸に関連した繊維事業のアパレル製造、フィルム製造などを手がける機能ソリューション事業、そしてスポーツクラブなどを手がけるライフクリエイト事業を展開しています。売上高では、いまもアパレル製造が全体の53%を占めています。しかし、3事業部の中で利益率は最も厳しいようです。製糸企業が次々と縮小してゆく中で、いまも2,000名を超える従業員を抱え、1,300億円を超える売上を上げているのは瞠目に値します。
危機をどのように克服したのか。戦争はその進展がわかるので、大事なものは疎開させた、という会社もあります。それが戦後に、事業を再スタートさせる大きなきっかけになった会社もありました。
各経営者が異口同音に会社の経営危機とその克服法について語るのは、多くの場合、会社は内部に危機の芽があるということです。震災や戦争という天変地異に遭遇した会社は不幸ではありますが、それほどの大きな災害は1人の経営者が経営している間に何度も発生するわけではありません。しかし、会社は常に内部においてさまざまな矛盾を抱えています。それはもともと矛盾をもっている人間が集まった組織だから、致し方がありません。 
大事なのは、そこに自浄作用が働いているかどうかです。それがないとどうなるか。経営者が驕り、社内で不正が発生し、社員の中に派閥ができて意志疎通が悪くなり、同族に会社を私物化されて社員がやる気をなくす。取材をした会社でも、そのような問題が多く聞かれました。それに対して、どのように対処したのか。採り上げた企業はそれらへの対処に成功したから、今日がありました。

第81回:100年超企業10社の言説から特徴を捉える

8.経営者の驕りをいかに防いできたか

人間性は変化します。会社を作った当初は、清い大義名分と強い意志をもっていた経営者も、経済基盤ができ、いろんなところでいい目をするようになると、人間性が変化することがあります。驕り、高ぶり――これは本人が気づけば治まり、本人も他人も組織も傷つくことなく終わります。しかし、驕っているときの本人は、自分の驕りに気づきません。そして、社員や人に対する話し方や態度が徐々に変わります。
「社長待遇というのがあるでしょう。取引先からはちやほやされ、いろんな会合へ行っても上座へ座らされる。こういう待遇に慣れてくると、人間は弱いもので、物事が自分の意図どおりに行かなかったときに我慢できなくなるんです。それを驕りというのではないでしょうか」。このように、具体的に自分自身に「驕りの定義」をもっている経営者は、一種のバロメーターがあるので、驕りに気づきやすいでしょう。
ある経営者はこうも言います。「自分が経営しているというよりも、この期間だけ自分がこの会社を預かっている、と考えています」。こういう考え方ができれば驕りとは無縁の経営者になれるでしょう。
日経ビジネスが1984年に発表した『会社の寿命』で、会社がその命脈を絶やす要因には大きく分けて2つあると言いました。

経営者が変身努力を怠る
無謀な多角化によって、企業の命を絶やす

このふたつは二律背反しています。
変身する努力をしなさい、だが無謀な多角化はダメ、ということです。どの程度を変身努力と言うのか、どこからを無謀な多角化と言うのか、不明瞭です。企業が成長すれば、多角化路線は当たったと言われ、業績が下降すれば無謀な多角化と言われる。だからこそ、謙虚な姿勢と見方を失わないための人間性が必要なのでしょう。
変化することは賢明なことですが、同時に、古きを捨てて新しきを得ることでもあります。ここに語られているのはシステムではなく、経営哲学です。しかし、企業である以上、経営者を驕らせないための仕組みが必要です。先代経営者が長生きする、というのも一つです。しかし、これを仕組みに取り入れることはできません。中小企業にとっては、これを仕組みとして組織に備えるのは容易ではありません。
備えるならば、代表者にモノの言える人を代表者の近くに置く、ぐらいでしょう。社外取締役を採用したり、監査役を強化することもひとつです。長寿企業には長寿するための経営哲学として、伝わっているものは確かにありました。
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