8.経営者の驕りをいかに防いできたか

人間性は変化します。会社を作った当初は、清い大義名分と強い意志をもっていた経営者も、経済基盤ができ、いろんなところでいい目をするようになると、人間性が変化することがあります。驕り、高ぶり――これは本人が気づけば治まり、本人も他人も組織も傷つくことなく終わります。しかし、驕っているときの本人は、自分の驕りに気づきません。そして、社員や人に対する話し方や態度が徐々に変わります。
「社長待遇というのがあるでしょう。取引先からはちやほやされ、いろんな会合へ行っても上座へ座らされる。こういう待遇に慣れてくると、人間は弱いもので、物事が自分の意図どおりに行かなかったときに我慢できなくなるんです。それを驕りというのではないでしょうか」。このように、具体的に自分自身に「驕りの定義」をもっている経営者は、一種のバロメーターがあるので、驕りに気づきやすいでしょう。
ある経営者はこうも言います。「自分が経営しているというよりも、この期間だけ自分がこの会社を預かっている、と考えています」。こういう考え方ができれば驕りとは無縁の経営者になれるでしょう。
日経ビジネスが1984年に発表した『会社の寿命』で、会社がその命脈を絶やす要因には大きく分けて2つあると言いました。

経営者が変身努力を怠る
無謀な多角化によって、企業の命を絶やす

このふたつは二律背反しています。
変身する努力をしなさい、だが無謀な多角化はダメ、ということです。どの程度を変身努力と言うのか、どこからを無謀な多角化と言うのか、不明瞭です。企業が成長すれば、多角化路線は当たったと言われ、業績が下降すれば無謀な多角化と言われる。だからこそ、謙虚な姿勢と見方を失わないための人間性が必要なのでしょう。
変化することは賢明なことですが、同時に、古きを捨てて新しきを得ることでもあります。ここに語られているのはシステムではなく、経営哲学です。しかし、企業である以上、経営者を驕らせないための仕組みが必要です。先代経営者が長生きする、というのも一つです。しかし、これを仕組みに取り入れることはできません。中小企業にとっては、これを仕組みとして組織に備えるのは容易ではありません。
備えるならば、代表者にモノの言える人を代表者の近くに置く、ぐらいでしょう。社外取締役を採用したり、監査役を強化することもひとつです。長寿企業には長寿するための経営哲学として、伝わっているものは確かにありました。