5.経営へのこだわりについて

長寿企業の経営のこだわりは、PLでは利益へのこだわりが68%で、売上へのこだわり18%の3.8倍です。BSでは自己資本比率が54%で、2位が流動資産の18%なので、圧倒的な過半数をあげています。成長することよりも、企業が安定的に維持されることのほうに、重点を置いています。
経営全般(19項目)の中で重視する分野を調べた結果を、ヒト、モノ、カネ、技術、情報、哲学の6分野に分けたところ、1位:技術、2位:ヒト、3位:カネ、4位:経営哲学、5位:モノ、6位:情報という順位になりました。他の項目で聞いた「経営上で重視する分野」でも技術が1位になっており、技術が2位になった質問項目「後継者として先代から受け継ぐのに重要なこと」ともあいまって、技術の重要度の高さがわかります。
かつてはヒト、モノ、カネと言われてきた経営の3大要素に変化が起こっている可能性があります。ビジネスの国際化とデフレで、業界内での優勝劣敗と下克上が激しくなったために、人間関係や取引実績だけで他社に勝てる時代ではなくなったこと。また、インターネット等の効用で、情報の社会的な共有化と民主化が進み、商品の需要者と供給者の間で、知識や能力の格差が少なくなったことで、需要者の要求レベルが上がり、それに応えられる供給者と応えられない供給者ができてきています。パナソニック、シャープ、ソニー、そしてサムソンなどのテレビ製造業界を見るとよくわかります。但し、技術と言っても、単に物作りの技術だけでなく、経営のメソッドや資本投資の技術も範疇にはいると考えねばなりません。
このような大競争の時代になり、自社を他社と差別化する技術が求められることを反映して、技術が上位に来ていると考えられます。