現在の社長は何代目になるかを聞いたところ、四代目は27.2%、五代目は19.9%、三代目:15.5%でした。最大値は一九代です。経営年数の平均が144年でしたので、それが四代目だとすると、一代が36年になります。ただ、一代から四代目までが皆、36年とすると、四代目はもう引退しなければならないので、一代から三代までを40年と考えると、四代目はいま24年目ぐらい、という計算が成り立ちます。
仮に、一代を40年と考えますと、25歳だと65歳まで、35歳だと75歳まで。平均寿命は1900年で44歳、1950年で61歳でしたので、一代目と二代目は当時では長命な方々であっただろうと考えられます。

長寿企業のひとつの秘訣は、創業者が長生きしている、という割合が高いようです。パナソニックも日立も創業者が長命でした。仮に短命でも、その後を引き継いだ二代目、三代目が長命であったというケースも見られます。1999年では81歳まで寿命が延びたので、初代、二代目が短かったら、三代目、四代目がしっかり長生きをする、という必要があるでしょう。
つまり、長寿企業の特徴は一代ごとの社長在任期間が長い、ということです。各々の経営者がオーナーとして長年君臨し、自らの命を賭して企業を守り続け、早いうちから次の代にトップとなる後継者と現場で一緒に働き続けてきた人たちです。
また、代数が少ないというのは、それだけ経営の継承の回数が少なかったということです。いままでの項目を見ても、経営の継承がいかに会社の方向性の転換をおこすのかがわかります。経営の継承に失敗した企業は、長寿にならないことになってしまいます。

今月にお会いした会社は創業100年になる電気設備関係の会社です。そこでは三代目の婿養子は一流大学の卒業で鳴り物入りで10年前に社長に着任されましたが、会社の経営がおかしくなって、銀行が乗り込みました。その経営者を放り出して、銀行が主導でオーナー系の株式をすべて買い取り、プロパーの社員から四代目を選んで着任をさせ、銀行から来た役員がずっと経営を監視している、という体勢です。
また、ある化学染料会社も100年を超える企業ですが、オーナー系四代目の経営者が大型投資を続けて借金が膨らみ、「このままでは借金を返してもらえない」と考えた銀行から役員が入って、同じオーナー系の五代目にバトンタッチさせて、以来、10年以上、銀行からの役員が経営監視をしています。
このような銀行の経営操作を経ずしてずっと経営が続いているとしたら、それ自体がミラクルなことです。そのためには、まず経営トップが健康で、一代をできるだけ長く在任し、なおかつ後継者を早いうちから会社に入れて一緒に経営に携わり、経営を禅譲するという態勢を作ることが、平均的な成功例のようです。