「家訓、社是、社訓」の有無を尋ねたところ、有るは255社(78%)、無いは72社(22%)になりました。圧倒的な数字の違いで、ほぼ4/5社が家訓、社是、社訓があるという結果になりました。これは明らかに長寿企業になるためのノウハウの一つと言えます。
さらに「家訓、社是、社訓」が有ると答えた企業に、それらを破ったことがあるかどう かを尋ねたところ、有るは41社(16%)、無いは215社(84%)でした。社訓があると答えた企業では84%という高い確率で破ったことがないと答えられました。アンケート合計社数からすると65.5%で、2/3の会社には社訓があり、破ったことはない、という回答でした。長寿企業では高い確率で、社訓を実直に守っておられる様子がわかります。

業種別に見ると、流通業28.6%、非製造業29.5%には家訓が有りませんでした。流通業、非製造業を除いた平均では85.4%に家訓があって14.6%に家訓がありません。モノをつくらない業種では家訓を必要としない会社が製造業に比べて多いことがわかります。それだけ時世の変化に対応するほうが大事と考えておられ、一貫した理念や考え方よりも、その時代の変化に対応するために経営方針を変えたり、取扱商品や販売ルート、販売方法を変えたりすることが大事と考えられている経営者が、製造業よりも多いということでしょう。
モノ作りをする会社では、モノを作り、続けていく志によって経営者が支えられており、それが家訓等に表現されていると考えられます。

聖徳太子の時代に日本に伝わった仏教には「山川草木悉皆成仏」(さんせんそうもく しっかいじょうぶつ)という考え方があります。草木に命があるというのは見ていてもわかりますが、山川にもあるというのは、大きな岩や水の流れにも仏性がある、命があるということを言っております。これは長い年月を経て、私たちの身の回りの物すべてに命がある、という考え方に根ざしてきました。
中でも、自ら手や機械を使って作り出す物に、丹精を込めて命を与えようとするのは、誠実な作り手ならば行き着く境涯でありましょう。そこからモノ作りの精神が発現し、家訓や社訓となって、代々に受け継がれてゆくのは、自然の成り行きのように思います。