前回は、長寿企業の創業時は、どういう業種が多いかを見ました。今回は現在の業種と比較して、その差異と要因を考えてみます。

創業時と現在の業種

これが平均144年の間に変遷した業種です。全体の転業率は16%。このカテゴリー分けの転業以外で、取扱商品を変えたのも含むとさらに増えます。転業率では水産・鉱農業と金融業は母数が小さいので参考になりませんが、他は建設:5%、食品製造:16%、その他製造:27%、流通業:10%、非製造業:18%となっています。


建設業が増えています。近100年のうちGDPがマイナスになったのは1922、23、93、98、99、2001、02、08、09年の9回。GDPが不明な戦時中と合わせて14回がマイナス成長と考えますと、86年間はプラス成長してきました。よって建設業は良かったのでしょう。転業率が最も低く、社数を増やしているのは大健闘です。


食品製造の社数が変わっていないのは5社が出て、5社が入ってきたからでした。それ以外の会社は144年間、ずっと食品を製造してきました。たいへん素晴らしい。創業者が作った食品と販売地域の選択眼が子孫を繁栄に導いたと言えます。


その他製造がもっとも社数を減らしています。食品以外の製造業には厳しい時代がうかがえます。7社が流通業に転身しました。戦後まもなくのころは、日清紡でもナベカマやアイスクリームを作って、売れる物は何でも売って糊口をしのいだといいます。


流通はもともと119社と最大でしたが、11社減って19社増え、差し引きで8社増やして127社になりました。この144年には、有為転変がありましたので、その時の情勢にあわせて商品を変えてきた結果、流通業が多くなったと言えそうです。非製造業は今でいうサービス業です。運輸業や理髪、整体などが考えられます。


衣食住でも衣は我慢できても、食と住は我慢の限界が低いので、ビジネスとして強い、ということが、ここからもわかります。