経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2012年04月

第57回:過去10年の経常利益の平均、および同族、非同族と、先代から受け継ぐ要素:カネ

長寿企業の経常利益の現状と、先代経営者から引き継ぐ要素として「カネ」を大事に考えている経営者の回答を掛け合わせたものです。ここからは経営の利益率とお金への関心の強さに関係があるかどうかがわかります。

57図表

この表の1位と2位を見る限りは、11%以上の高収益・長寿企業と10%以下との差が見られます。ただ、ひとつずつを確認してゆくと、10%以下のところは1位と2位が19と17であまり変わりません。11%以上のところも7と6ですからわずかです。
しかし、赤字に向かって行くに連れて、1位と2位の差が開いてゆく傾向があります。
さて、これは何を表しているのでしょうか。利益率が低いグループほど、お金が大事と考えている経営者が多い、ということが言えそうです。

経営にはお金は大事、だけれどもそのために働いているのではない、という考え方があります。「やや重要」が第1位になった11%以上のグループの経営者は、そのように考えているのではないでしょうか。

57グラフ

各回答を選んだ経営者の人数ですので、差異がわかりにくいですが、横帯グラフでみると、比率に大きな差がないことがわかります。母数の大きさに違いはありますが、%で見るとほとんど変わらない。お金については同族も、非同族も同じ見方をしている事が伺えます。

今回の答えの特徴としては、「重要」と「やや重要」に大きな差がなかったということです。お金は企業にとっては「血液」のようなもの。いつも循環し、動いていないと、死んでしまう最も重要なものであることは確かです。しかし、それ自体が目的であるならば、血液であるお金は「やや重要」どころか「重要」を誰しも選ぶことでしょう。そうではなかったところが、成功長寿企業の特徴と言えます。
つまり、平均144年の経営を進めてきた経験から、お金があっても経営がうまくゆくとは限らない、ということをたくさんの事例を見てこられた長寿企業ならではの選択ではないでしょうか。

第56回:過去10年の経常利益の平均、および同族、非同族と、先代から受け継ぐ要素:モノ

長寿企業の経常利益の現状と、先代経営者から引き継ぐ要素として「モノ」を大事に考えている経営者の回答を掛け合わせたものです。ここからは経営の利益率と「モノ」への関心の強さに関係があるかどうかがわかります。

56図表

利益率が10%以下と11%以上では、モノを重要と考えている人が第1位となっていますが、5%以下、2%以下のところでは重要を選んだのは第2位になっています。ここに若干の価値観の違いが見られます。それは「モノ」を重要に考える経営者の会社の利益率が高いということは、モノを大切に扱うことで、製品や商品を大事にし、または設備を大事にする、という経営者の考え方が社員に浸透し、それが利益をもたらしてくれていることが想像できます。

56グラフ

同族で「重要」と答えているのは37.1%、非同族では46.2%で9.1%の差で、非同族のほうが、大事と考えています。さらに「やや重要」にまで拡大してみると、非同族の「やや重要」と「重要」の比率は92%。一方、同族は83%と下回わります。

「やや重要」の部分は、ほぼ同じ%がでていますので、「重要」と考えている人が、非同族に多いということです。これは意外な結果でありました。同族のほうが、モノに対するこだわりがある、モノを大切に考えている、と予測していたからです。
ここにはどういう心理が働いているのでしょう。同族でないと、会社の物的資産を引き継ぐことは難しいので、会社の資産に関心が強いとは考えにくい。よって、継承するための資産への関心ではなくて、実際に経営を進めてゆく上での物的資産への関心が強いと考えられます。また、製品や商品へのこだわりということも考えられます。資産の効率運用という関心が、底流にあるのかもしれません。

第55回:過去10年の経常利益の平均、および同族、非同族と、先代から受け継ぐ要素:ヒト

長寿企業の経常利益の現状の答えと、先代経営者から引き継ぐ要素として「ヒト」を大事に考えている経営者の回答を掛け合わせたものです。ここからは経営の利益率と「ヒト」への関心の強さに関係があるのかどうかがわかります。

55図表

赤字~11%以上まで、いずれも重要と答えた経営者が各%の第一位に来ています。2%~10%までは第一位が80%以上を占めていますので、人の重要性と利益率には関連性はありませんでした。つまり、経営者の80%以上の人たちは、人を重要に考えているが、利益率には差があるということです。よって、利益率を左右する要素は、別にあると考えるべきなのでしょう。
続いて、同族、非同族と、ヒトへの評価について掛け合わせてみました。

55グラフ

ここでいう非同族は、何代も前から同族ではなくなっている会社も、現在の社長が同族ではない会社も含まれています。
1位と2位の順位は同じですが、同族も、非同族にも「重要である」と「やや重要である」の数字のボリュームに圧倒的な差があります。これを%で見てみると、214/256=83.6%、57/65=87.7%となっています。特筆するほどの差ではないことがわかります。つまり、同族である場合も、ない場合も「ヒト」に対する重要さに差はない、ということでした。
「ヒト」の重要性については、利益率に関係なく、また同族・非同族にも関係がありません。販売無くして会社無し、社員無くして社長無し。社員あればこその社長であり、会社です。ほとんどの経営者が重要と考えていますが、それをどのように言葉と行動に表しているのか、そこに差が出ている可能性があります。
重要なのはわかっているけれど、それを表現できない、行動で表せない社長さんの真意が社員に伝わっているかどうか、それによって利益率に差が出ていると考えるのは、小生のうがった見方でしょうか。

第54回:後継者として、先代から受け継ぐのに重要なこと

後継者として先代から受け継ぐのに重要なことを聞いたところ、ここでも技術は高い位置にランキングされていました。

第1位:ヒト
第2位:技術
第3位:カネ
第4位:経営哲学
第5位:モノ
第6位:情報


技術はカネよりも大事に考えられており、モノは5位に低迷しています。その間に技術と経営哲学が割り込む形になりました。この順位はたいへん示唆に富んでいます。

第22回の「経営上で重視する分野」の調査結果でも、ヒト、モノ、カネ、技術、情報、哲学の中では下記のような結果になりました。

ヒト:4.0
モノ:3.8
カネ:3.9
技術:4.1
情報:3.3
経営哲学:3.9


ここではわずかながらも技術がヒトを抑えて、第1位になりました。これが新興企業やベンチャー企業の答えなら予想もできますが、まさか平均144年の長寿企業が技術に重点を置いているとは考えておりませんでした。では同じ企業に、20年前にアンケートをしても同じ結果が出たでしょうか? 予想ではありますが、技術ではなかっただろうと思います。

今日、かつてのような系列取引や長年の取引を頼みの綱にして経営、営業をしているだけでは、競合の激しい時代に破れる、という危機感が長寿企業の背景にあると思います。自社独自の技術や商品・製品、競合社と差別化できる何らかの特徴がなければ、長寿企業といえども生き残れない、という経営者の厳しい環境認識が見えてきます。
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