経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2012年02月

第48回:過去10年の経常利益の平均と、後継者の人選について重要な事

過去10年の経常利益の平均と、後継者の人選について重要な事
48回_図表

後継者の人選についての考え方と、経営の利益率に関連性があるかどうかを見てみました。縦列で1位~3位の順位に大きな差はありませんでした。若干、「同族であること」を選んだ経営者の利益率が、他と比べて高めである、ぐらいのことでした。よって、後継者の人選の考え方と利益率には関連性はないと言えます。

これは「関連性がなかった」ということに意味があって、利益率の違い(会社の経営成果の違い)が、後継者の人選について影響はなく、ほかの考え方が影響している可能性があるということです。
ただ、予想できるのは同族が経営していて、一定の経営成果が上がっていれば、そのまま同族を続けることは可能ですが、経営状態が悪ければ社員達も「このままでいいのか・・・」という疑問をもつでしょう。
さらに経営が悪化していけば、いよいよ銀行も口を出してくるでしょう。支配同族を銀行が追い出したという実話は枚挙にいとまがありません。

第47回:後継者の人選で重要なこと

後継者の人選で重要なこと

同族であることが全体の29%で、反対の非同族であることは1%。合計すると同族であるかないかにこだわっているのは、全体の30%であることがわかります。1/3以下の社長さんしか、後継者について同族であるかないかに関心がない、というのは意外な反応でした。そして、同族であることが29%ですから、これも思っていたよりも少なかった。これが20年、30年の企業が答えているのではなく、平均144年の会社ですから、なおのこと驚きます。70%は同族の有無ではなく、後継者の人間力を問題にしています。統率力、人柄、指導力は合計で53.8%。過半数の社長は能力を重視しています。

第9回「取締役に締める同族の割合」では過半数の51.3%が同族の取締役でした。また、第10回の同族がもつ株式の比率では同族が76%(3/4超)を所有していました。ここから読めるのは、株式は所有したまま、経営者は徐々に同族ではなくなる傾向が強まっていく可能性があるということです。
ただ第45回にあるように、過去の平均144年にわたって、経営者は約80%が同族であった、という調査結果があります。理性的に考えると、後継者選びは同族にはこだわらないが、いざ後継の時代を迎えると、多くが同族者に落ち着くというのが実体のようです。

第46回:企業の経営継承力(2)――先代の考え方をどのように継承したか

先代経営者から当代経営者はどのようにして経営を引き継いだか、という方法については、一緒に仕事をしてが73.8%、口伝は18.0%、社史を使った例は3.5%でした。ほとんどの会社では、長年、先代とともに仕事をしてきたので、その中で経営の方法や考え方が引き継がれてきたようです。

一代の経営期間はおよそ40年であるという試算を第44回の時にしました。それは30年が一代の経営者としてのピークだとすると、2代目以降には前後に継承される時代と、継承する時代があります。成功長寿企業は経営の継承がうまくいっているケースが多いからこそ、経営が順調です。その前後の時代をどのように前任者と後継者が過ごすか、というのはたいへん重要な時代で、この善し悪しによって、経営の継承の正否が決まります。成功長寿企業は、そこのところを上手にできたからこそ、今日につながりました。
一緒に仕事をして経営を継承したのが3/4で大半を占めます。そして口伝と社史ですが、直接に語って引き継がれたことは、「一緒に経営をして」ではないことから、一子相伝のように先代から後継者へ語って引き継がれています。いまでもこういう引継方があることに驚きました。
 また、少ないですが社史を媒介にして経営を引き継いだ、というケースがありました。社史はそれを作る途上で、先代と後継者が歴史認識を交換したり、共有したりする機会があり、経営の継承が同時に進められる、ということは社史を作っておりますとまれに遭遇します。また社史で取り上げる時代を、先代の時代までとして、社史発刊を先代の花道とする方法をとられる企業もありました。
一代平均で40年の経営期間があると考えると、前任者と後継者が重なって働く期間も長くとれます。その期間こそ、次の代を繁栄に導く役割を担っているのではないでしょうか。

今回のアンケートには、日本で120年余り事業活動をしてきた、世界最大の民間会社エクソン・モービル有限会社も対象となっており、アンケートの回答をもらい、トップのインタビューもいたしました。その時に、米国系の企業で、巨大な組織だから、経営のマニュアルが用意されていると思って聞いたところ、そういうものは無い、と断言されました。次いで、経営の継承について尋ねたところ、「一緒に経営する期間をおいて、引き継がれる」と答えられ、日本と変わらなかったのを思い出します。
400万年前、いまのエチオピア当たりで生まれたホモサピエンスは、なぜ彼の地から地球の隅々までの遠い旅路へと着いたのでしょうか。それは夫婦の妻が長生きして、娘に出産の危機を乗り切る方法を教えられるようになったからだと言われています。つまり、人口が急速に増加したことによって食糧危機に見舞われ、他の地を求めて歩き出したわけです。そうして、人類は今日に至る長い旅を続けてきました。

先代の長生きが、次世代をバックアップすることで、スムーズな運営を助けることは、私たちの経営の継承にも言えるのではないでしょうか。先代経営者が長生きをし、後継者とよい関係を保って補佐する態勢を作れるか否かは、まさに企業の「経営継承力」が問われているのだと思います。

第45回:企業の経営継承力(1)――代々の経営者は同族か

代々の経営者は同族かどうかを聞いたところ、同族であったのは79.6%、同族でなかったのは20.4%でした。約80%の会社は平均144年の間、ずっと同族できた、ということです。そんなことが可能なのか、と改めて驚きます。ただ、ずっと嫡出子の直系できたのではないケースが多いようです。傍系家系(親戚筋)も取り込んで代をつないできたという話を聞きました。
また、創業者に兄弟が多く、その人たちも経営に携わっているとすると、二代目以降は兄弟姉妹(義理も含む)に社長の座が移ることになります。その時に、一気に株式の分散がおこり、兄弟姉妹は共同経営的な様相を呈してきます。創業者にしますと、身内が経営の要所を支えてくれれば安心です。また、利益共同体の一員同士で、本音の話し合いで経営の改善行動をとれるので、特に、初期の頃は助かること請け合いです。
そうするうちに創業者の子供世代が育ってくる。そのころには創業者の兄弟あたりが経営者になっているというケースがあります。兄弟に渡った株式は相続で、その子供世代(創業者の子供からするといとこ)が引き継ぎます。こうして親族の間に散らばった株式は、年と代を経るにしたがって創業者やその直系の後継者からどんどん遠ざかっていきます。

創業は明治維新前にさかのぼるある中堅財閥は、いまは非上場の不動産会社とリース業によって隆々としておられます。社長曰く「株主の中には、顔を見たことがない人がけっこういる。これをいつかは集めて、株式の整理をしなければいけない」。言うは易し行うは難し。この株式の整理はなかなか進まない、という話は今回の成功長寿企業の取材でたくさん耳にしました。
そのような経緯で、同族の中で広がり、拡散していく株式は一応、同族の支配下に会社があることを意味します。税務署の規定による「同族」とは、経営者の親族は6親等以内、結婚を縁とした姻族3親等内の経営の継承を同族経営と読んでいます。親族6親等はいとこのひ孫、姻族3親等は妻の弟の息子までが3親等です。これほどに広いと、一生会ったことのない人もたくさん出てきます。このような親戚筋から後継者を迎えているケースもけっこうあります。

2010年秋に取材をさせていただいた創業200年を超える企業では、途中で姓の違う2人の同族者が経営をつなぎ、8代目の社長に娘婿を迎えました。結婚した時、娘婿は別の会社に勤めており、まさか自分が妻の実家の家業を継ぐとは思っておられませんでした。妻もそのことに賛成ではありませんでした。しかし、社長である義父と娘婿の間が近づいていき、娘婿のほうから姓も会社も継承することを義父に提案されました。義父には娘が二人でしたから、渡りに船。トントンと話がまとまり、はや社長を継いで11年がたち、業績も順調で、こういう理想的な同族継承というのを見て、羨ましく思われる方もあるでしょう。
こういう養子をともなう経営の継承を「入り婿」といい、娘に商才のある婿をもらって経営を継承できることから、大阪の商家では女の子が生まれると、赤飯を炊いてお祝いをしたそうです。
今回のアンケートでもっとも年数の多い会社は396年です。昔のことはあまりに古くてわからないらしいですが、ずっと同じ姓の者が経営を繋いできたことは確かだそうで、いまの代表者もその姓を名乗っておられます。驚異的な経営の「継承力」で、この継承力は経営者ではなく、企業の生命力を源泉にしたパワーだと思います。
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