経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2012年01月

第44回:代表者は何代目かについて

現在の社長は何代目になるかを聞いたところ、四代目は27.2%、五代目は19.9%、三代目:15.5%でした。最大値は一九代です。経営年数の平均が144年でしたので、それが四代目だとすると、一代が36年になります。ただ、一代から四代目までが皆、36年とすると、四代目はもう引退しなければならないので、一代から三代までを40年と考えると、四代目はいま24年目ぐらい、という計算が成り立ちます。
仮に、一代を40年と考えますと、25歳だと65歳まで、35歳だと75歳まで。平均寿命は1900年で44歳、1950年で61歳でしたので、一代目と二代目は当時では長命な方々であっただろうと考えられます。

長寿企業のひとつの秘訣は、創業者が長生きしている、という割合が高いようです。パナソニックも日立も創業者が長命でした。仮に短命でも、その後を引き継いだ二代目、三代目が長命であったというケースも見られます。1999年では81歳まで寿命が延びたので、初代、二代目が短かったら、三代目、四代目がしっかり長生きをする、という必要があるでしょう。
つまり、長寿企業の特徴は一代ごとの社長在任期間が長い、ということです。各々の経営者がオーナーとして長年君臨し、自らの命を賭して企業を守り続け、早いうちから次の代にトップとなる後継者と現場で一緒に働き続けてきた人たちです。
また、代数が少ないというのは、それだけ経営の継承の回数が少なかったということです。いままでの項目を見ても、経営の継承がいかに会社の方向性の転換をおこすのかがわかります。経営の継承に失敗した企業は、長寿にならないことになってしまいます。

今月にお会いした会社は創業100年になる電気設備関係の会社です。そこでは三代目の婿養子は一流大学の卒業で鳴り物入りで10年前に社長に着任されましたが、会社の経営がおかしくなって、銀行が乗り込みました。その経営者を放り出して、銀行が主導でオーナー系の株式をすべて買い取り、プロパーの社員から四代目を選んで着任をさせ、銀行から来た役員がずっと経営を監視している、という体勢です。
また、ある化学染料会社も100年を超える企業ですが、オーナー系四代目の経営者が大型投資を続けて借金が膨らみ、「このままでは借金を返してもらえない」と考えた銀行から役員が入って、同じオーナー系の五代目にバトンタッチさせて、以来、10年以上、銀行からの役員が経営監視をしています。
このような銀行の経営操作を経ずしてずっと経営が続いているとしたら、それ自体がミラクルなことです。そのためには、まず経営トップが健康で、一代をできるだけ長く在任し、なおかつ後継者を早いうちから会社に入れて一緒に経営に携わり、経営を禅譲するという態勢を作ることが、平均的な成功例のようです。

第43回:株式未公開の今後について


 今後も未公開にする:73.3%
 自分が経営している間は未公開:21.7%
 できれば公開したい:4.3%


「自分が経営している間は未公開にする」を含むと95%が当面の未公開を予定しています。できれば公開したい企業は経営者が個人保証で借金をしていて事業の承継に困っているか、企業の知名度を上げたいか、ということが予想されます。

株式を上場するまでの経営年数について調べたSMBCコンサルティングの調査によると、2005年に上場した158社の平均は18年7ヶ月で、その中には30年を超えた企業も33社、60年を超えた企業が3社含まれていたそうです。最短期間は外資系サービス業の12ヶ月で、最長は化学会社の80年3ヶ月でした。
1995年の調査では、平均年数が32年で、2000年は22年で、短期間に年数が短くなっています。この期間に東証マザーズや大証ヘラクレスなどができた事による影響が考えられます。創業100年を超えてから株式を上場したら、さぞかし話題になることでしょうね。

次に、株式未公開を続ける理由を聞きました。

43グラフ

理由の第1に上がっているのは、「そのほうが経営しやすい」でした。長寿企業は自己資金を豊富にもっています。「外部の資金は必要ない」と答えた企業は22.4%あって、これらの企業には株式の上場は煩わしいだけかもしれません。仮に、株式を公開すると、株主利益を考える必要がでてきますし、毎期、配当することが期待されます。
また、株主総会を通じて、株主の意見を聞き、経営に取り入れていくことも求められます。近年では、経営上のトラブルをとらえて、株主代表訴訟ということも起こりえます。

今までのアンケート結果を見ると、長年正しい経営をし、資金を蓄積してきた企業にとって、外部株主の意見がもっとも経営を左右するのが本当に正しい経営なのか、という疑問を持っている節があります。
自己資本率が40%を超えると、無借金状態だと言われます。長寿企業には自己資本比率が高い企業が多いので、あえて株式を上場して、借金をする必要はない、というのが本音のようです。また、M&Aも増えてきている昨今、それに対する怖れは長寿企業ならばこそ、強いものがあるでしょう。

第42回:過去の収益状況の同業他社との比較

42グラフ_1

自社の収益状況は同業他社に比べて高いと思っているのが合計で32.8%。低いと思っているのが20.4%でした。長寿企業は同業他社に対して収益状況で少し自信をもっていると言えそうです。また、約半分の会社は同じ程度と思っている傾向も明確に出ています。では、収益状況の違いによる、同業他社との比較を見てみましょう。

42グラフ_2

上記のうす色背景の部分は、正当な回答であることがわかります。2%以下の利益率は他社に比べても低いはずです。また、6%以上の利益率は他社に比べて高い、という評価をするのも、この低成長の時代ならわかります。しかし、左下のうす色背景はどう解釈できるのでしょうか。6%以上の利益率で他社よりも低い、と答えている13.3%の経営者は甚だ正直で有り難いですが、利益率の高い業界におられるようです。

次に、右上の濃い色背景ですが、2%以下の利益率でも他社よりも高い、というのは有るでしょうか。流通・卸売業で、取引金額の高い物品(たとえば鉄鋼や医療用器械など)を扱っているところは、売上高は高いけれど、もともと売上高に対する利益率は低く、売上の大きさで稼ぐというビジネスです。よって、1%前後の利益率が多い業界ですが、売上高はけっこうあります。
ただ、「非常に高い」で2%以下のところにある1社はどうもおかしいと思いますが、利益が出ているだけでも十分、多くの同業他社が赤字なのかもしれません。

長寿企業のコンペティターには長寿企業もあり、そうでない企業も含まれます。前回の利益状況と重ね合わせると、長寿企業がよい経営をし、同業他社をリードしている様子が見えてきます。

第41回:過去10年の経常利益の平均

41グラフ

赤字の会社は全体の2.2%でした。アンケートに返信をしてこられなかった企業には赤字企業が多く、赤字だから出せないと渋った可能性があります。仮に、出してこられなかった企業について、下記の国税局調査の欠損法人の割合が71.5%であることを考えると、下記のような試算ができます。

 返信の無い企業:1,500社-330社(返信有りの企業数)=1,170社
 返信の無い企業の内の黒字企業:1,170社×(1-0.715)=333社
 調査結果が返ってきた黒字企業323社と足すと、合計656社。
 この656社は1,500社に対して43.7%(今回の標本1,500社のうちで想定される黒字企業率)

それでも下記の国税庁の調査結果からわかるように、一般企業の約71.5%が赤字企業であるなら、はるかに黒字の企業が多いのがわかります。これは長寿企業において特筆すべき点でしょう。
しかも図によると、6%以上の利益を上げている企業が19.9%あります。1/5社が高い利益率を上げています。筆者の経験では、経常利益が5%を超えると現金収支もプラスになっており、資金が蓄積し、金融面でも、経営者の精神面でも、安定した経営をしていることでしょう。

平成20年度分の法人260万3,365社から、連結子法人の数( 6,257社) を差し引いた259万7,108社のうち、欠損法人は185万6,575社で、欠損法人の割合は71.5% となっています。企業の多くは赤字で推移しており、その中で長寿企業はたいへん素晴らしい業績を上げています。株式上場会社は日本経済を牽引する役割を果たしています。長寿企業は安定した経営をして、日本の経済の下支えをしていると言ってよいでしょう。

国税庁(2008)「会社標本調査結果」-調査結果の概要-.法人企業の動向.2010年11月20日検索
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2008/pdf/01.pdf
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