経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年12月

第40回:会社の資産運用(財テク)について

会社の資産運用について聞いたところ、「していない」が2/3を超えました。

 第1位:していない(66.8%)
 第2位:株式投資
 第3位:不動産投資


これは長寿企業の真骨頂ではないでしょうか。あくまでも本業で稼ぐことを選択しています。一代で財産を築いた経営者が、一夜にしてそれを失ってしまった例は、長寿企業の平均経営年数145年の時代の中でいくらも見てきたことでしょう。その代々の経営者が、後の経営者に財テク禁止を伝えてきたからでしょう。住友の家訓「浮利を追わず」はその有名な一説です。

投資対象として上がったのは株式と不動産でした。不動産は会社や工場の敷地用に入手したのは資産運用ではないので含まれません。投資はあくまでも転売用として買った土地、建物のことです。株式は取引関係上のおつき合いという場合もあり、純粋な資産運用となっていないケースもあるでしょう。取引先から依頼された株式保有は、なかなか断りにくいものです。いずれにしても、株式投資なのでより現金に近いところで運用されていることがわかりました。

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続いて資産運用をしていると答えた経営者に資産運用の成果はどうだったのかを尋ねたところ、上記のような結果になりました。大幅な利益を出せたのはわずか4%で、利益が出せたのは25.2%だけでした。どちらでもないと損失をたすと75%となるので、結果から見ても、投資はしないほうがよいのは確かなようです。もともと資産運用をしていない会社、経営者は、こういうことを感覚的にわかっているわけです。「どうせくたびれ儲け」に終わるということです。

そういえば、大王製紙の井川意高前会長は、最初にカジノに行った時に儲かって、そこからはまりこんでいったそうです。例えひとたび儲けたとしても、それが災いの元になる事もあるので、やはり「触らぬ神に祟りなし」です。ちなみに大王製紙は設立から68年ですから、今回の長寿企業平均の半分の年数もありません。

第39回:資金的に厳しかった時代をいかに乗り切ったか

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筆者が創業した27年前、最初に銀行口座を開設したのは住友銀行城東支店でした。脱サラ前に勤めていた出版社で担当した作家の堺屋太一氏の親戚筋が支店長をしておられ、筆者の自宅から一番近い銀行だったことからお願いに行きました。
住友銀行とはその前より取材の関係で浅からぬご縁をいただいており、後にJR西日本の会長をされた村井勉氏には尼崎のご自宅にお話を伺いに行ったことがありました。また、宿泊ゴルフにも同伴したことがあり、その村井氏の秘書をされていた中西正夫氏(現川島織物セルコン社長)とは年賀状をやりとりする関係になり、数年に一度お会いし、今もご厚誼をいただいています。そのようなことからいの一番に住友銀行に口座開設に行きましたが、当座を開けてもらえたのはその5年後で、融資をもらえたのも、その以後まで待つことになりました。

最初に当座預金口座を開いてくれたのは大和銀行(現りそな銀行)でした。竹内さんという営業マンが飛び込みで来られてから徐々に親しくなり、数ヶ月後には当座を開いてくださり、その数ヶ月後には大金であった500万円を融資していただきました。借金が嫌いで、なんとか現金と自己資金だけで回していきたいと四苦八苦していた筆者に、入社数年の竹内氏は丁寧に銀行の活用方法を教えてくださり、最初の借金をしました。口座に銀行からお金が入った時の感動と安堵と怖れは、いまも忘れられません。
その後、長く大和銀行とお付き合いをしていましたが、例の国有化の時に預金だけを残して借金を返済し、ほぼそれまでの関係を清算しました。きめ細かく対応していただいた営業マンも支店長もいなくなり、人的な関係が切れたことからの清算でした。
企業と銀行の付き合いには言葉には表しにくいような関係があります。創業以来、ある銀行をずっとメインに付き合ってきたという会社もあれば、大阪のある製造業の創業者は、危機の時に従来の銀行すべてに融資を断られ、出身地の地方銀行に初めて相談に行ったところ、危機一髪の資金を助けてもらい、以来、上場をした今もメイン銀行として深いおつき合いをしているという。
あるエンターテインメント関係の創業者は、多数の銀行と付き合っており、それらを天秤に掛けながら、融資や預金を複雑に運用しておられます。それは銀行を手玉にとること自体を楽しんでいる趣がある。その方は、創業の頃、銀行にさんざん苦しめられたから、いまその仕返しをしているとうそぶいていました。

資金が厳しかった時は、図のように65%超の経営者が銀行の借り入れに頼っています。しかし、その銀行とどういう付き合い方をするのかは、単にお金の貸し借りだけではなく、情報の貸し借りと気持ちの貸し借り。そして常からの情報開示の蓄積が、いざというときの関係を左右するのだろうと思います。

第38回:営業利益を拡大、維持に重要な事

営業利益を拡大し、維持をするのに何が必要かを尋ねました。今回のアンケート結果の中でも、これほど明確に出た答えはありませんでした。「営業利益を拡大させるには売上を向上させる」は64.7%ですから、明らかな指針が示されています。

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「利益の素は売上である」というのは事実です。他に上がっている選択肢を見ると有力な内容もあったので、けっこう得点が分かれると思っておりました。
さて、この結果は何を表しているのでしょうか。営業利益を上げるには、原価を低減し、一般管理費を効率よく使えば、結果として営業利益は捻出されます。しかし、それは損益計算書に書かれている順番であり、至極当たり前の答えです。当たり前の順番であるなら、もっと答えが割れてもよさそうですが、売上のところに集中しました。
それは今の時代を反映しているのではないでしょうか。生き残りをかけた激しい時代が、今から10数年前に始まりました。いわゆる成長しない時代の「大競争時代」の始まりです。経済が伸び悩む中でも成長しようと思えば、同業他社の売上を食って行くか、それを超えて同業他社と組んで事業領域を広げ、無用な競合を防ぐか、何らかの工夫が必要です。
また、もう一つ、長寿企業の特徴を表しているのは、「社員または給与を減らす」ことにはまったく理解を示さず、最も低い「2人」であったことです。長寿企業は社員を増やすことにたいへん慎重ですが、社員の雇用を守ること重大に考えています。よって安易に雇用の削減や給与カットは行ないません。また、そうなることを恐れて、安易に人を増やさないのでしょう。万が一、社員の雇用について問題が発生したら厳しい局面に立つことを知っている経験豊富な長寿企業の一面でもあります。

この研究を開始した時、ある大学の教授は「企業は成長して、社会の活性化させてゆくことに意味がある。ただ、長寿することにどれほどの意味があるのか?」と言われました。ハーバード大学式MBAの考え方でいくと、確かに「倒木更新」が社会のプラス要素につながるという見方があります。しかし、企業が倒れる時に作り出される社会的なマイナス要素を考える必要があるというのが筆者の考えです。
売上の拡大は会社のためです。それは会社の力を高め、影響力を強めることになります。社員数が増えることは雇用の拡大に貢献します。営業利益の拡大は会社のためだけではなく、雇用を守るために必要なことです。
世の中に、売上は増えたけれども、雇用を守れなかった企業はいくらでもあり、それでは元も子もないと考えているのが長寿企業の特徴です。

第37回:売上の拡大、維持に重要なこと

長寿企業には、長年取引をいただいている安定した取引先があると思っていました。長寿企業が顧客によって発展もし、顧客によって潰れもする、という考えをもっていることは、前回までに説明してきました。しかし、現在の顧客一辺倒ではないことが、この質問でわかります。

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それはトップに「新規顧客の開拓」が28.4%を獲得しており、第2位に「新商品・新製品の開発」が26.3%で上がっていることからわかります。それらを合計すると54.7%になり、十分な過半数をとっています。つまり、新しい商品・製品を開発して、新しい顧客を開拓するという、既存の顧客だけではなく、まだ見ぬ顧客に目を向けていることがわかったのです。
答えの中にある「新しい流通の開拓」や、「新規取扱店の開拓」も新しい顧客の開発の一環として考えられるので、これらを合計すると、実に67.5%と2/3の企業が新規の顧客開拓をあげています。ということは、長寿企業はたいへん新規顧客の開拓に熱心であることがわかります。もっている顧客は砂のように流れ落ちてゆくことを経験的に理解していますので、現在の顧客を守っていくだけではやってはいけない、ということを歴史から学んでいるのです。

前回調査で、売り上げ好調時でも品質にこだわっている会社は50.5%社でした。それに今回の答えをあわせると、現在の商品で売上を増やすことを考えながら、つねに新商品を開発し、もって新しい顧客を開拓すると考えているようです。
長寿企業はつねに新規顧客開拓にいそしんでいる姿が浮かび上がりました。この取り組みが、実は長寿企業になる秘訣のひとつと言えそうです。

第36回:売り上げ好調時の商品量と品質のバランス

長寿企業は、売り上げと品質をどのように天秤にかけているのでしょうか。そのバランスをどのようにとっているのか、を聞いてみました。

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売上増大を重視は2.5%で、品質重視は18.4%。実に7倍以上の差があきました。やや売り上げ重視とやや品質重視は、14%と32.1%でこれも2倍以上となり、品質重視と売上重視の合計同士では16.5%と50.5%で、3倍以上になっています。圧倒的に品質重視が多くなっています。また、品質重視とやや品質重視の合計が50%を超えているのも長寿企業ならではと言えないでしょうか。さすが、という一言です。
ただ、気になるのはどちらとも言えないです。わずかの差ですが、この答えを選んだ企業が最も多かったわけですから、無視できません。
アンケートの前後に、何社かの長寿企業の経営者にインタビューをさせていただきました。売上と品質のバランスを聞くと、やはり「品質重視」と答えられます。全部で100年を超える企業の11社にインタビューをしましたが、上記グラフの比率なら1~2社は売上重視で、3社はわからないで、5社は品質重視と言われるはずですが、インタビューした11社すべてが品質重視と言われていたのは、印象的でした。
ある長寿の出版会社の経営者に、話を伺ったときのことです。

「やはり、出版社としては言論活動によって、読者を良い方向へ導くというのが、もっとも大事な仕事ですか?」という問いかけに、「当社がそれを主体事業としていたら、とっくに会社は無くなっていたでしょう。当社は、読者の役に立つデータを販売する会社であって、そのために長年蓄積をし、より使いやすい内容と方法で、読者に提供することを、第一の事業としてきました」

と明確に答えられました。これはそのデータの質そのものがメインビジネスであったと言われたもので、その説明には、たいへんな迫力を感じました。

反省を込めて、筆者の経験をお話しいたします。知り合いの紹介で当社で単行本を出版した著者に出版記念会の開催を提案し、発行直後に盛大に式典を行い、本のPRを開始しました。ところがその時点ではまだ、書籍は出たばかりですから、採算がとれるのかどうかわかりません。出版記念会が終わったとき、著者が「いやー、多くの方に来てもらったけど、多くの借りを作った。やるんじゃなかった」と言われたとき、筆者はあまりにガッカリして、「うちも儲かるかどうかわからないでやっているですから、そんなこと言わないでくださいよ」と、つい言ってしまったのです。それ以来、その著者とは疎遠になりました。ほんとうはにぎやかな出版記念会を行って、親しくなるはずだったのが真逆になりました。著者は「自分とは金儲けのために付き合っているだけなんだな」と見透かされたのでしょう。つい本音が出てしまって、それを聞き逃さなかった著者。当社が提供していた商品の品質は、完成した書籍だけではない、と日頃社員にいながら、こんな時にポロリと出てしまい、恥ずかしく、申し訳ない思いをしました。
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