経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年10月

第31回:成功事例と失敗事例の共有

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共有してきたとやや共有してきたの合計は65.4%となり、2/3になりました。成功事例の共有は、仕組みを作っているほどではないとしても、多くの企業でされているようです。成功例というのは、目立ちますし、業績に如実に反映し、しかも成功であることを当事者達も吹聴するでしょうから、おのずと共有化されるケースがあると思います。

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一方、失敗事例については、成功事例よりもやや落ちました。共有してきたとやや共有してきたの合計は60.2%でした。失敗事例というのはやはり共有しにくいものです。とくに、それが代表者やオーナーの家族が絡んでいる場合はなおさらです。それでも60%を超えているのは立派と言えるのではないでしょうか。
特に、失敗事例の共有というのは、そこから学び、二度と繰り返してはならない、ということは重々わかってはいるのだけれど、汚点を残す、というのはやはりやりにくいものです。また、会社と経営者に謙虚さと自信がないとできないことであります。
それでも成功事例と失敗事例の「共有化してこなかった」というのは思っていたよりもはるかに数値が低かったので、安心したと言うか、喜びました。

東京にある、創業397年の会社の代表者(同族で17代目)にインタビューをしたとき、その方は成功例はもちろん、失敗例もすべて開示し、共有化していると答えられました。「すべて」というのはなかなか言えないことですし、できないことです。しかし、他の社員さんがおられる前で、明確に答えられましたので、偽りのないことです。ほんとうに立派な経営者だと思いました。
この成功例と失敗例の共有をしている率の高さは、長寿企業になるための、ひとつの秘訣であると考えられます。

第30回:家族主義と実力主義の違いと、同業他社に比べた過去の収益状況の関係(ヨコ比率)

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ヨコの比率からは、各主義のヨコ列を100%として、各々の企業が自社の収益状況を他社と比べてどう見ているのかが、各収益状況ごとにわかるようになっています。

この表によると、「家族主義」では非常に低いと、非常に高いはゼロです。一方、「実力主義」では非常に低いがわずか4%ほど有りますが、ここは余り差がないと言えるでしょう。「やや家族主義」と「やや実力主義」を比較してみます。非常に低いと非常に高いではあまり差は有りません。また、低い、高いのレベルでもあまり差は出ておりません。

家族主義とやや家族主義の高い、非常に高いを足すと66.1%と高い数値が出ます
実力主義とやや実力主義の高い、非常に高いを足すと69.4%と上記との差はあまりありません。
家族主義とやや家族主義の低い、非常に低いを足すと53.6%
実力主義とやや実力主義の高い、非常に高いを足すと43.6%

これによると、やや家族主義のほうが、他社に比べて低いと考えています。しかし、実体は先の項目「過去の10年の経常利益平均」では実力主義のほうが他社に比べて低いことがわかっていますので、実績と比較とはずれがあることがわかります。
また、家族主義、実力主義とも、どちらとも言えない企業のうち、業界他社と同程度の利益と考えている企業は全体の50%です。中庸の企業は、業績も中庸と考えている節がありそうです。
では、この表の中でいずれの数字が突出しているかというと、「家族主義」の低い、という37.5%と、同じく「家族主義」の同程度の25%です。「家族主義」の会社は自社は、他社に比べて収益状況は低いと思っている企業が、他の主義の会社よりも多くあります。
また、高いと非常に高いを選んでいるのは153.2%と13.2%で合計が166.4%です。一方、低いと非常に低いの合計は116.2%ですから、長寿企業は他社に比べて、自社の業績は高いと考えている企業が多いことがわかります。
長寿企業の競合先はたいてい非長寿企業ですので、そういう企業と自社を比較して高いと見ているのは、長寿企業の素晴らしさの現れと考えられます。

さて、各主義ごとの収益性の実績と、他社との比較を読まれた経営者は、もしかすると、実力主義を止められるかもしれません。ここまではっきりと、「実力主義・やや実力主義」の会社の業績は、「家族主義・やや家族主義」の収益状況よりもよくないと出ているからです。そして「やや家族主義」を上げている企業の業績が最も安定して収益を上げていることもわかりました。
この「やや家族主義」というのが、どういうものなのか。各経営者で受け取り方は若干違ってくるかもしれません。筆者の理解は以下の3つです。

・社員の雇用を守ることが大事だと考えているが、最大の優先事項ではない
・経営に多少の波乱があっても、社員の首を切らない
・赤字を出さない経営を社員の努力と協力を得て、必ず実行する

このように考えている経営者の企業が「やや家族主義」の会社ではないかと思います。これにより、会社と社員の関係は安定しており、ギスギスした感じはないでしょう。結果、業績も安定的に推移していると言えるようです。
これからの自社の社員と会社の関係をどのようにつくっていくのか、それを考える参考にしたいと思います。当社ではさっそく「やや家族主義」宣言をしまして、社員と会社の関係の方針に据えました。具体的には、社員旅行を年に1回は行う。正社員は基本的には会社から解雇はしない。
収益性が低くなっても、社員の雇用を守る。ただし、赤字を出してまでそれをすることはできないので、絶対に赤字は出さない経営を経営陣と社員は最優先で行う、ということです。
そのような「やや家族主義」的な経営を目指してゆきたいと宣言し、今後さらに会社と社員の一体感を醸成したいと社員に話をしました。

第29回:家族主義と実力主義の違いと、同業他社に比べた過去の収益状況の関係(タテ比率)

会社の代表者は、自社の利益の現状と見通しをつぶさに観察していますが、それは自社だけを見ているのではなく、同業他社との関係にも常に目と耳を配っています。ここでは前期の自社の利益率を聞いただけではなく、同業他社との比較を聞くことで、業界内での自社の位置づけをどのように見ているのか、を聞いてみました。前期の自社の成果だけではなく、客観的な評価も含まれていますので、興味深い結果が出ています。

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上記の表は、タテを100%とした表です。ここからは下記のことがわかります。
「実力主義」と「家族主義」はともに他社に比べて非常に高い利益率を出していると思っていない。

「家族主義」では非常に収益状況と答えた企業はないが、「実力主義」は1/3が非常に低いと答えている。同様に、「やや家族主義」に非常に低いはないが、非常に低いと答えた企業のうち2/3が「やや実力主義」の会社でした。ここには顕著な違いが現れており、予想の範囲内ですが、実力主義の会社は危機感を持って経営をしている人が多いので、「実力主義」になっているのかもしれません。前節で述べましたように、実力主義は遠心力の強い会社ですから、経営者の目も外に向いています。一方、「家族主義」の会社は、目が社内を向いているので、危機感は実力主義の会社よりも低く、業績よりも社員を守る、ということに重きが置かれている可能性があります。「実力主義」の会社は社員よりも、売上、利益で成長志向が強いので、逆に自社の経営成果は他社に比べて低い、と見ている可能性があります。

「実力主義」と「やや実力主義」を選んだ企業は全体の45%程度ですから、格段に多いというわけではありませんが、「家族主義」と「やや家族主義」を選んだ企業が全体の20%なので、「家族主義」の半分弱になっていることは考慮に入れておく必要があり、その影響はヨコ比率で端的に表れてきます。

第28回:家族主義、実力主義の経営成果の違いについて:総括

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前記の2回でタテ比率とヨコ比率それぞれを見て、長寿企業の特徴を分析しました。このテーマは今回のハイライトの一つですから、タテ比率とヨコ比率を総括しておきたいと思います。

上記では赤字から10%以下までの4項目で、「実力主義」のほうが数が多いことがわかりました。特に、2%以下のところで「家族主義」と「実力主義」の数値差が大きくひらきました。11%以上のところでは「家族主義」と「実力主義」とが同じ数値になっています。この表では、「実力主義」のほうは利益率が悪く、「家族主義」のほうがよいようです。もっともよいのは「やや家族主義」のところの数値が安定しています。赤字企業は「やや実力主義」がトップで、2位はどちらともいえない、でした。
11%以上の企業は、「やや家族主義」がトップで、「どちらとも言えない」と「やや実力主義」が2位。
「家族主義」と「やや家族主義」の赤字と2%以下の合計は31.4%、「実力主義」と「やや実力主義」の赤字と2%以下の合計は101.9%となります。
「家族主義」と「やや家族主義」の10%以下と11%以上の合計は58.9%、「実力主義」と「やや実力主義」の10%以下と11%以上の合計は77.5%となります。

ここからわかるのは以下のことです。
  1. 家族主義傾向の会社は、赤字を出す比率が低い
  2. 実力主義傾向の会社は、赤字を出す比率が高い
  3. 家族主義の会社の利益率は高くない
  4. 実力主義の会社の利益率は家族主義よりも高い会社が多い
  5. 実力主義の会社は、利益率が高いか、低いかもしくは赤字かというように極端に分かれる傾向がある
  6. 家族主義の会社は、利益率が低くもなく、高くもなく、中庸にくる
  7. やや家族主義の会社が最も高い利益率を確保している
  8. 2%以下の利益率の企業が最も多い
  9. 5%以下の利益率の企業が80.7%を占める。長寿企業の利益率は高くない
  10. 「10%以下」以上の利益を最も多く獲得しているのは「やや家族主義」で、25%の企業が5.1%以上を確保している
  11. やや家族主義と家族主義の5.1%以上の利益率は41.7%
  12. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は26.3%
  13. やや家族主義と家族主義の2%以下の利益率は98.9%(200%のうち)
  14. やや実力主義と実力主義の5.1%以上の利益率は88%
  15. 家族主義のほうが利益率は高い。しかし赤字企業はない
  16. 「どちらともいえない」と「やや家族主義」を比較しても、「やや家族主義」のほうが利益率がよいのがわかる。
ここから言えるのは、「実力主義」「やや実力主義」より、「家族主義」「やや家族主義」傾向のほうが利益率は高く、経営の安定性があることです。また、「どちらとも言えない」よりも、「やや家族主義」のほうが利益率が高いので、中庸よりも、「やや家族主義」とするほうが利益率が高いことがわかります。これは本調査で得た気づきの一つであると考えられます。一般的には、実力主義のほうが利益率は高いと考えられてきたことを覆す結果となりました。
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