経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年09月

第27回:家族主義と実力主義と、過去10年の経常利益の平均:ヨコ比較

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 前回のタテ比率と違って、各々の主義の会社には、どういう経営成果の会社が多いのか、というのがわかる図・表です。一つずつ見てみましょう。

「家族主義」の会社は赤字の会社はありませんが、2/3は0.数%~1.9%の範囲にあります。よって、利益率のよい集団とは言えません。
一方、「実力主義」の会社は2%以下に4割があり、5%以下にも4割を超える企業があります。相対的に「家族主義」のほうは低く安定しており、実力主義はよい企業とよくない企業のバラツキがあり、「家族主義」よりは若干高めの経営成果を上げている、と言えそうです。
「やや家族主義」では、73.3%が2%以下と5%以下のところにあり、「やや実力主義」では79%がその範囲にあります。そして10%以下と11%以上では「やや家族主義」が25%,18.4%が「やや実力主義」でした。そして、赤字企業は「やや実力主義」のほうが少し多かったようです。これらを見ると、「やや家族主義」のほうが経営成果は高く、経営が安定していると言えそうです。

筆者は、経営の力学によく遠心力と求心力という例えを使います。遠心力は外に拡がろうとする力ですから、会社が売上や企業の規模が拡大する力のことです。求心力は逆に、中心に向かおうとする力ですから、最終損益に向かっていくので必ずしも売上の拡大を望んでいるわけではありません。家族主義は求心力、実力主義は遠心力と考えられますので、やや求心力が強いぐらいが経営成果としては安定していると言えそうです。しかし、あまりに求心力が強いとそれも困りまして、低成長低利益体質になってしまいます。つまり、社員の雇用を守ることが第一優先になって、会社の利益よりも強い存在意義になります。それは素晴らしいことではありますが、やはり会社としては伸びない。いずれじり貧になってしまう可能性もあります。
このようなことから、「やや家族主義」=やや求心力の強い会社、ぐらいがちょうど経営の進展には適当であることが、この数値から読みとれます。

第26回:家族主義と実力主義と、過去10年の経常利益の平均

家族主義と実力主義の違いと、過去10年の経常利益の平均について、関連性を見るために、カイ2乗検定(理論値と実測値の適合度合い)をおこなったところ、家族主義と実力主義の違いが、黒字年数比率について、有意な差はないということでした。
数値の上では、下記のようになりました。

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家族主義・実力主義の違いと、過去10年の経常利益の関係(タテ比率)

上記の表はタテを100%にして作成しています。この表を見ますと、赤字が最も多いのは「やや実力主義」のところで、「実力主義」と合計すると57.3%。つまり赤字企業はその6割近くが「やや実力主義」か「実力主義」を標榜しています。
一方、「やや家族主義」と「家族主義」をたしても赤字企業は14.3%。「家族主義」の会社に赤字企業はない、ということもわかります。
反対に、11%以上という良好な利益を上げている企業を見ると、35.6%が「家族主義」と「やや家族主義」、「家族主義」に0%というのが目を引きます。「やや実力主義」と「実力主義」を合計すると35.7%とほぼ同じ数字になります。この結果から、「実力主義」は高収益の企業もあるが、赤字企業も多い、という経営成果に大きなブレがあると言えます。一方、「家族主義」は赤字企業は少ないうえに、高収益企業もある、という結果になりました。まさか、こんなにはっきりと特徴が出てくるとは思いませんでした。これは何を表しているのでしょうか?
筆者は、社員と会社の関係が経営の成果を左右していると思います。

つまり、「家族主義」「やや家族主義」は社員と会社の関係は安定していることが予想されます。恐らく簡単に社員を切ったりはしない会社でしょう。反対に、実力主義の会社では社員と会社の関係はドライです。成果が上がらなかったら、配置転換や部署替えなどが起こっているのかもしれません。それを社員が発憤材料と捉えてくれたら会社は活力が出てきますが、逆に作用すると、社員の腰が落ち着かず、結果は思うように経営の成果が上がらない、ということになるでしょう。
また、ここで見逃しては行けない視点は、「家族主義」の会社に赤字と11%以上という企業がないことです。もともと「家族主義」という会社は少ないのですが、その中でも赤字と高収益の企業がないということは、大きなブレはないけれど、高収益企業もない、ということですから、「家族主義」もそこそこのほうがよい、ということでしょう。続きを読む

第25回:家族主義と実力主義

25回グラフ

家族主義、実力主義について、5段階に分けて聞いたところ、図のような結果になりました。家族主義とやや家族主義の合計は19.9%。実力主義とやや実力主義の合計は44.5%。1/5社が家族主義、約2社に1社が実力主義とみることができるようです。長寿企業は家族主義、というイメージが強かったのですが、意外に家族主義は少なく、実力主義が多かったことに驚きました。

多くの回答は経営者にいただいているので、「我が社はこうである」という自身の考え方を述べておられますが、その中には「我が社はこうありたい」という希望を述べておられるケースもあるでしょう。この家族主義と実力主義に他の要素を掛け合わせて分析すると、徐々に希望の部分が剥がれ落ちていくのがわかります。家族主義がよいのか、実力主義がよいのか。それについては、この後に続く分析で少しずつわかってきます。

温情的家族主義経営を標榜した鐘紡の中興の祖・武藤山治(慶応3年生まれ)は米国留学の経験をもち、米国の経営学者・テイラーの経営管理手法を鐘紡に導入して疲弊していた鐘紡を建て直しました。そして社員の福利厚生を厚くし、社内報を日本で最初に発行するなど、独自の経営手法と労使関係を築き、多くの会社に影響を与え、日本的経営の元祖と言われました。その後、子息・武藤糸治氏の跡を継いだ伊藤淳二氏の下で、鐘紡はカネボウとカタカナに社名を変えて業態転換を図りました。一時期は伊藤氏の経営がもてはやされましたが、内実ではカネボウの経営は粉飾にまみれ、2004年に倒産へと至ります。その伊藤氏は1987年まで日本航空の会長をしていました。

一方、現在、日本航空の会長をされている稲盛和夫氏は大家族主義経営を標榜されています。大家族=大きな家族という意味で、血縁の家族ではなく、他人同士でも家族のように喜怒哀楽を共にしてゆく、ということです。それを具体的な考え方としてまとめた「京セラフィロソフィ」、そして高度な管理会計を実現した「アメーバ経営」の二本立てで京セラという高収益企業を作り、それらの経営手法を導入した日本航空の2010年度決算は世界航空会社でトップの経常利益をたたき出し、V字回復の原動力になりました。

また、現代は米国MBA式の経営がもてはやされる時代でもあります。目標設定と管理会計を組み合わせたシステムで経営をするMBA方式に、家族主義的な考え方が入り込む余地はありません。

長寿企業の経営者達は、このような先人が経験した家族主義と、新しい時代の要請である実力主義の間で揺れ動いているのでしょう。その迷いが33.8%の「どちらでも無い」という3人に1人を生みだしているようです。

第24回:長寿企業がおこなっている社内行事について

長寿企業がおこなっている社内行事について


第1位:経営方針発表会  
第2位:社員旅行
第3位:事業部門ごとの計画・実績発表会


これは別の4つ(運動会、家族招待パーティ、職場別コンパ、創立記念会)を含めた7つの社内行事の中から、何を行っているかを選んでいただいた結果です。

福利厚生である「社員旅行」を挟んで、第1位と第3位に事業計画等についての発表会を入れているのは、より事業計画に合致した会合に時間を割こうとしている傾向があります。ちなみに、創立記念会をしているのは全体の25.3%でした。1/4の企業しかおこなっていないのは、長寿企業にあっては意外な結果でした。長寿企業は創業記念などを大事にされている印象がありましたが、周年記念を毎年、時間とお金をかけてお祝いをすることには積極的ではない、ことがわかりました。周年記念をことさら強調することなく、会社の業績向上に視線を向けていることが伺えます。

この他、選択肢にない行事としては以下のようなものが上がっていました。
懇親いも煮会、そば打ち大会、技術発表会、創意工夫発表会、新入社員歓迎会、QCサークル活動、新年会、誕生会、ボウリング大会、コンサート、納涼会などです。
最近では、社員旅行をしていない企業もあるようです。ひと時代前なら、個人では行けなかった旅行に会社が連れて行ってくれる、というメリットがありましたが、いまではいろんなパックやルート、値段の多様性もあって、行きやすくなっています。

ある長寿企業の経営者は、「地方の神社仏閣を見学して、夜遅くまで酒を飲んで騒いで、翌日の朝早くからまた見学・・・というような社員旅行に意味があるとは思えない。それなら勉強会をするほうがいい」と、端的な意見を述べておられました。
これについて筆者は経営者として「思い出づくりの効用」という効果を社員旅行に見出してきました。会社ではなく、離れたところで、一緒に思い出を作っていくことによる連帯感、一体感があるのではないか、ということです。

聖徳太子のあまりにも有名な一七条憲法の第一条「和を以て貴しとせよ」は全文はこうなっています。

「和を大切にし、いさかいをせぬようにせよ。人はそれぞれ仲間があるが、全くよく悟った者は少ない。それ故君主や父にしたがわず、また隣人と仲違いしたりする。けれども上下の者が睦まじく論じ合えば、おのずから道理が通じ合い、どんなことでも成就するだろう。」(宇治谷孟氏訳)

上下仲良くせよ、ということですね。それは一緒に思い出づくりをすることも互いの気心を知るきっかけになるのではないでしょうか。当社では3年前に中国・北京に社員旅行をし、本年は大阪は淡路島に、東京は千葉・木更津の方面に一日旅行をしました。今も以前の旅行の思い出話がちょいちょい出てくるのは楽しかったからでしょう。

第23回:社員の教育・研修で重要なこと

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まさに長寿企業らしく、会社の理念の教育がもっとも大事と考えている経営者が多いようです。内容を分けてみると、業務に直接関係することは「業務知識そのもの」「商品・製品の知識」「目標設定」「年度の経営方針」となり、合計で149でした。一方、理念のように考え方におよぶ教育については、「モチベーションの向上」「懇親」「人間関係づくり」「マナー」「一般常識」「会社の理念」で、合計は184になり、前者の1.23倍でした。もっと差が出てくるかな、と予想しておりましたが、思っていたほどではなかったので、逆に意外でした。

ということは、長寿企業でも理念教育よりも、業務に直接関係する知識、技能、スキルの研修が大事だ、と考える会社が増えてきた、と言えそうです。それは前回調査で経営の大事な要素として「技術」が浮上してきていることと、密接に関わっていると考えられます。
「会社の理念」という選択も圧倒的ではありませんでした。全体の23.2%ですから、4社に1社もない、ということです。これが思いの外少なかったことの方が、意外でありました。
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