経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年07月

第18回:家訓、社是、社訓を破ったことがあるか

「家訓、社是、社訓」の有無を尋ねたところ、有るは255社(78%)、無いは72社(22%)になりました。圧倒的な数字の違いで、ほぼ4/5社が家訓、社是、社訓があるという結果になりました。これは明らかに長寿企業になるためのノウハウの一つと言えます。
さらに「家訓、社是、社訓」が有ると答えた企業に、それらを破ったことがあるかどう かを尋ねたところ、有るは41社(16%)、無いは215社(84%)でした。社訓があると答えた企業では84%という高い確率で破ったことがないと答えられました。アンケート合計社数からすると65.5%で、2/3の会社には社訓があり、破ったことはない、という回答でした。長寿企業では高い確率で、社訓を実直に守っておられる様子がわかります。

業種別に見ると、流通業28.6%、非製造業29.5%には家訓が有りませんでした。流通業、非製造業を除いた平均では85.4%に家訓があって14.6%に家訓がありません。モノをつくらない業種では家訓を必要としない会社が製造業に比べて多いことがわかります。それだけ時世の変化に対応するほうが大事と考えておられ、一貫した理念や考え方よりも、その時代の変化に対応するために経営方針を変えたり、取扱商品や販売ルート、販売方法を変えたりすることが大事と考えられている経営者が、製造業よりも多いということでしょう。
モノ作りをする会社では、モノを作り、続けていく志によって経営者が支えられており、それが家訓等に表現されていると考えられます。

聖徳太子の時代に日本に伝わった仏教には「山川草木悉皆成仏」(さんせんそうもく しっかいじょうぶつ)という考え方があります。草木に命があるというのは見ていてもわかりますが、山川にもあるというのは、大きな岩や水の流れにも仏性がある、命があるということを言っております。これは長い年月を経て、私たちの身の回りの物すべてに命がある、という考え方に根ざしてきました。
中でも、自ら手や機械を使って作り出す物に、丹精を込めて命を与えようとするのは、誠実な作り手ならば行き着く境涯でありましょう。そこからモノ作りの精神が発現し、家訓や社訓となって、代々に受け継がれてゆくのは、自然の成り行きのように思います。

第17回:長寿企業における労働組合の有無と同業他社に比べた過去の収益状況の関係

比較グラフ

経営者は、自社が同業社の中でどういう位置にあるのかについて、強い関心をもっています。それは日頃から、いろんな情報を集めている中で、つねに自社の状況と比べているからで、収益性についても、同業他社の経営状況の情報をしっかりもっています。そのような背景から、労働組合の有無と、同業他社との収益比較を聞いてみました。

これを見ると、労働組合が有る企業では収益状況が「非常に低い・低い」と答えた企業は33%で、無い企業では16%でした。倍の差が出ています。また、収益状況が「高い・非常に高い」で有る企業は25%、無い企業は36%で、収益性が高いと答えた企業も、労働組合が無いと答えた企業のほうが多数でした。

前回第16回の経常利益平均の結果と比べると、若干、違いが出ています。過去10年の経常利益平均では、有る企業の3%以上の利益を出している企業が多い、という結果が出ているからです。つまり、3%以上の利益は出ている企業でも、同業他社はもっと利益を出している、という見方をされているのでしょう。

同業他社と同程度以上の経営成果を出していると答えている企業(経営者)は、有る企業で67%、無い企業では84%です。ここにも違いがあらわれています。労働組合の無い企業のほうが、よい経営をしており、有る企業のほうは厳しい経営状況にあると、経営者は考えているようです。

創業から伸び続けているソフトバンクや楽天には労働組合はありません。どちらも創業者の強いリーダーシップで牽引されている会社です。社員数からすると労働組合があって当然の規模ですが、結成しない(させない?)のですね。歴史と蓄積のある長寿企業でも、労働組合の有無によってこういう業績差が出てくるので、若い企業もそのことを学んでいる節があります。

第16回:長寿企業における労働組合の有無と過去10年の経常利益平均の関係

長寿企業と労働組合の関係について調査、分析する原稿は、次週までの7回になります。
実際に、労働組合のある長寿企業にとって、労働組合がどのような働きをしてきたのか。無い企業とは何が違うのかを知ることで、長寿企業の社内の労使関係がわかってきます。
それらをぜひ、自社の労使関係にうまく活かせていただきたいと願っています。今回は収益性についてです。

 
16グラフ画像

これは過去10年の経常利益の平均を、赤字、0~2%、3%~5%、6%~10%、11%以上の5つのグループで聞いたものです。いろいろな差異が出ています。

まず、赤字グループには労働組合有りの企業が圧倒的に多いようです。労働組合があることだけが要因ではないでしょうが、これだけの差がつくと、非上場の長寿企業にとって労働組合は厳しい存在と言えるように思えます。
ところが、5%以下~11%以上まので普通収益と高収益の企業の割合を見ると、有りが65.1%、無しが55.7%で、10%の差が出ています。つまり、労働組合とよい関係がもてている企業は労働組合の協力もあって、よい収益構造を作れており、それができていない起業は逆に、赤字に陥っている、ということがここからわかります。
そして高収益の11%以上のところを見ると、有りが1.2%、無しが5.7%ですから、労働組合のある企業では11%以上となるような高収益を上げることはままならない、というのがわかります。その高収益の部分は、しっかり従業員に配分されるということでしょう。
総体的に、労働組合の有る企業の経営状況は、良い企業と良くない企業が極端にでる可能性があることがわかります。
一方、無い企業では2%以下と5%以下の企業をあわせて79.9%となり、8割の企業は利益を計上しています。実は、これはたいへんなことで、非上場の非長寿企業で労働組合のない一般企業と比べると、大きな違いとなります。

国税庁の21年度分調査では、黒字申告企業は710,552社、赤字申告企業は1,900,157社です。黒字企業は全体の27.2%に過ぎません。
(http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2009/kaisya.htm)

ほぼ4社に1社しかないわけです。それに比べると、長寿企業の優秀さがよくわかります。
ここが長寿企業の真骨頂と言え、赤字を出さない、されど高い収益も出さない、という「ぼちぼち経営」が長寿企業になるための大きな特徴です。

第15回:長寿企業における労働組合の有無と家族主義・実力主義の関係

グラフ

上記の表を見ると、「実力主義・やや実力主義」の合計は労働組合の有無に関係なく、45%となっています。長寿企業では労働組合の有無に関係なく、約半数が「実力主義・やや実力主義」を標榜していると言うことです。労働組合は雇用を守る、社員はみな平等を標榜しているはずですから、ちょっと驚きの調査結果でした。

労働組合の有無による差は、どちらでもないから左の方に出ています。「家族主義・やや家族主義」の合計は17%と22%で、若干の違いが見られます。その差の5%はどちらでもない、に充当されていますので、労働組合の有る企業よりも、無い企業のほうが、わずかに家族的と出ていますが、有意な差と言えるほどではありません。
労働組合があると、会社と従業員の間に「労使」という関係が強まります。また、会社の中には、代表者と経営陣、組合員ではない管理職と、組合員ではない一般社員と、組合員の一般社員、その他非正規労働者の人たちといういくつかの層ができます。よって、いろんな層に配慮した人事制度が必要になってくると同時に、誰が見ても公平と思われる組織制度が社内で台頭してくるのは、自然な流れでありましょう。

それにしましても、今回の調査は創業100年以上の企業であり、平均では坂本龍馬が活躍していたころから継続している企業なので、歴史と年功、「継続は力なり」が抱負と思ったおりましたが、約半数が「実力主義・やや実力主義」と答えられていることが何よりの驚きでありました。
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