経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年06月

第14回:長寿企業における労働組合の有無と貸借対照表(BS)のこだわり第1位


長寿企業で、労働組合のある企業と無い企業には、貸借対照表へのこだわりに、何か有意な差があるかどうかを見たアンケート結果です。

これを見る限り、大きな差はないようです。あげるとすれば、流動負債に対して有る企業が3%、無い企業が11%。ここに若干の差があります。流動負債の多くは有利子負債ですから、労働組合の無い企業は、若干、有る企業よりも、有利子負債への関心が高い、と言えそうです。
一方、流動資産への関心も、無い会社のほうが6%高いようです。流動資産は現金または、1年以内に現金化できる資産のことですから、いわば手元の資金といってよいでしょう。無い会社は、手元資金の確保をより重視しており、その反対の有利子負債の多寡にも関心が高いということです。
これは労働組合の有る企業の平均社員数が509名、無い企業の平均社員数が123名ですから、企業規模にも関係がありそうです。

関心が高いのは、なんと言っても自己資本比率です。どちらも過半数を占めています。資本(資金)的に独立しているかどうか。これは労働組合の有無に関係なく、ダントツに高いと言えそうです。7%の誤差が出ていますが、59と52ですから、有意な差と言えるほどではないようです。

第13回:長寿企業における労働組合の有無と損益計算書のこだわり第1位

単位:%
  売上高 原価 粗利益 販売
管理費
営業
利益
経常
利益
当期
純利益
合計
有り 15 2 10 0 23 31 19 100
無し 21 2 11 0 25 28 13 100
誤差 -6 0 -1 0 -2 3 6 0

長寿企業で、労働組合のある企業と無い企業には、損益計算書へのこだわりに、何か有意な差があるかどうかを見たアンケート結果です。これを見る限り、それほど大きな差はないようです。あげるとすれば、売上高には無い会社のほうが、若干、こだわりが強く、当期純利益については、労働組合が有る会社のほうが若干、こだわりが強い、ということでした。

また、どちらも経常利益に最もこだわっている、ということもこの表からわかります。そして、経常利益と当期純利益の間には10%以上の差がありました。この二つの数字の間には税金の支払いがあるだけではなくて、不良債権の処理や株式や債権の売却損益などがあります。労働組合の有無が、金融収支や特別損益の経営判断に影響を及ぼすのは小さい、ということが言えるようです。

また、原価や粗利益にはあまりこだわっていない、ということも表の左の項目から読みてとれます。営業利益から当期純利益までで、労働組合の有る企業は73%(約3/4)、無い企業は66%(約2/3)がこだわりをもっているようです。もともと長寿企業には保守的な企業が多いと考えられますが、労働組合のある企業は、無い企業よりも、それが若干、強くなっていることがわかります。

第12回:労働組合の有無と取締役に占める同族者の割合

第12回グラフ

上記は、取締役に占める同族者の割合と、労働組合の有無をつきあわせたものです。取締役に占める同族者の割合が50%を超えているということは、同族者だけで議決の過半数が確保できるので、同族だけで取締役会の決済ができるということです。労働組合があって同族者比率が51%以上は17.4%で、逆の労働組合があって同族者比率が50%以下の会社は82.6%でした。労働組合がある会社の規模は前回の記事で平均が509人ということがわかっていますので、その規模の会社になるとオーナーシップから会社がはずれていくようになっているわけです。

労働組合の無い会社の平均社員数は123人でしたが、組合が無い会社で同族役員が半分を割る会社は46.5%で、組合が無い会社において同族役員が半数を超えるのは53.5%です。50%を境にわずか3.5%ですから、この2つの数字には大きな開きはありません。よって、長寿企業において、労働組合の無い会社での同族役員の数は半々と見て良いでしょう。このように、労働組合の有無は役員の同族比率に、多大な影響があることがわかります。
また、第11回の記事で、長寿企業において労働組合がある企業は全体の27.6%(90社)でした。そして、労働組合がない72.4%(236社)の46.5%(110社)は同族の取締役が半分以下なので、90社+110社=200/326社=61.3%の長寿企業は、労働組合に経営が開かれており、また取締役の過半数が同族以外が就任しています。

非上場であっても、長寿企業においては労働組合と役員会を通じて、社員が経営に参加をしている企業の割合は、非上場の一般企業に比べてかなり高い、ということがわかります。非上場であっても、長寿企業の経営は社員に開かれている――これは長寿企業になる、一つの秘訣であろうと考えられます。

第11回:長寿企業における労働組合の有無と社員数の関係

労働組合の有無を単純集計したところ、有るのは90社(27.6%)、無いのは236社(72.4%)でした。長寿企業の中で、約1/4社に労働組合があるという回答でした。

労働組合は全国の組合本部の数が26,696組合(2009年 厚生労働省『労働組合基礎調査』)ですが、この中には官公庁や地方自治体の組合も含まれているので、法人(株式会社や医療法人など)の組合結成率は全産業の中では1%にも満たない数です。それから考えますと、長寿企業における組合結成率は高いと言えるでしょう。それには時代背景があると考えられます。

長寿企業は戦前から存続してきています。戦前1940年の全国の労働組合はわずか49組合で、これでも戦前では最多数でした。当時の組合員数は9,455人で組織率は0.1%。戦後の労働組合数のピークは1984年の34,579組合で、この間に長寿企業にも労働組合が結成されるに至ったのでしょう。
長寿企業の労働組合の有無と、社員数の関係をひもとくと、労働組合のある企業の平均社員数は509人、無い企業は123人でした。労働組合があるから、企業が大きくなったのか、企業が大きいから労働組合ができたのか。一般的には後者で考えられます。
長寿企業になるために労働組合がどのような働きをしているのか、については全体の約1/4だけが労働組合有りですから、労働組合が有効に働いたから長寿企業になれたとは言えません。
長寿企業と労働組合には、存続年数と戦後の時代背景が関係していますが、労働組合の有無が長寿企業になるための条件とは言えないようです。

第10回:同族者がもっている株式の比率

316社の回答では、同族者がもっている株式の所有比率は76.1%でした。これはたいへん高い比率と言え、長寿企業の同族者はしっかりと会社の経営権を所持していることがわかります。

持ち株比率が50%を上回りますと取締役の選任・解任ができ、66.6%を上回ると経営を監視する監査役の選任・解任ができます。つまりいつでも社長を替える権限をもっているということですので、同族の中で社長を選び続けることもできます。他人を社長にしたとしても、いつでも替えられるので、逆に、社長さんはたいそうやりにくいことでしょうね。よほど給与がよいか、やりがいがあるか、名誉になるかでないと引き受けないでしょう。

また、会社の内容を変える重要事項を決定することもできるので、合弁やM&Aなどへの対応も、同族者間で決められます。今回の調査の長寿企業は非上場の企業を選んでいます。規模的には株式を公開できる企業もたくさん含まれていますが、その点では保守的な側面が見えてきます。

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