経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

2011年05月

第9回:取締役に占める同族者の割合

今回の質問における同族は、アンケートの中で国税局が同族と考えるのは、現社長が先代社長の親族6親等(先代社長のいとこの孫まで)、または姻族3親等(先代社長の妻のいとこまで)、にはいるかどうかという説明をしていますが、これは一般的ではないため、お答えいただいた方々に十分に理解されていたか、定かではありません。同族という言葉は経営分野では定着しており、各々の解釈がなされている可能性は否定できないと思います。
親族6親等、姻族3親等は相当遠い親戚まで含まれます。中には一生会うことのない親族もいることでしょう。ですので、自社は同族ではない、と思っておられるところが実は同族にはいる可能性がある、という解釈も必要でしょう。
連結会社を含む1社あたりの取締役の最大値は115人。最小値は1人でした。また、同族の最大値は9人、最小値は0人でした。調査対象企業の各社平均では51.3%でした。かろうじて過半数を同族が占めていました。全産業における同族企業の割合は37.3%(2003年,中小企業庁統計調査)でした。
今回の長寿企業の平均社員数は229人でしたので、この規模の会社の同族比率を中小企業統計に見ると、44.5%が非同族でした。つまり、全産業統計では55.5%が同族企業であり、今回の長寿企業調査では51.5%でしたから、4%の差がある程度でした。

会社の同族性を見るには、取締役の同族比率だけではなく、資本の同族比率を見るのも必要です。次回にご説明をしますが、予想されるのは取締役に占める同族比率よりも、資本に占める同族比率のほうがかなり高い、ということです。
取締役には任期があり、いまでは1年任期の企業が多くなっています。役員は変えられますが、資本は一旦、書き換えると、元に戻すのは非常に難しいので、資本の同族比率のほうが高くなるのは当然と考えられます。

第8回:社員持株会の有無と、同業他社に比べた過去の収益状況との関係

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企業の代表者は、業界内外の人脈をもっているので、自社が業界内でどのような位置づけにいるのか、どういう評価をされているのかを、よく知っているものです。それは常時、そのことに気をかけているからで、多方面から集まる断片的な情報を組み合わせていくことで、業界内の企業の位置づけや評判を感じとっています。

そのような中で、代表者が感じている自社の業界内における収益性と、持株会の有無には何らかの関係があるのかを解いてみました。上記の表を見ると、持株会が有るのと無いのでは、いずれも持株会が有る方が収益性がよいという結果が出ています。前回の各企業の収益性と持株会の有無をクロスで集計した時にも、持株会があるほうが、若干、企業の収益は安定している、という傾向が見られたので、やはり持株会には企業の収益性を安定させる、一定の効果はありそうです。ただ、各々に大きな差が出ているわけではないので、持株会の有無が要因となって、このような結果を出している、という事は言えないと思います。

いつの時代も企業経営者にもっとも近い味方は社員です。社員持株会の有無は、社員と会社、社員と経営者、経営者と会社の関係をどのように作り、維持してゆくか、に深い関係があります。経営者が会社を私物化することなく、労使の関係が安定していれば、企業の収益性も安定してくる、ということで、それに対して社員持株会が貢献していると言えるでしょう。

実のところ、出版文化社でもこの社員持株会を作っております。導入しましてかれこれ10年たちますが、配当無しは2回で、50%配当という年もありましたので、効果を実感しております。代表者にとりましても、有意義な制度だと思っております。
ただし、クリアにしておかなければならないのは、将来にわたる会社の所有に関する考え方です。社員持株会を作る、ということは、社内において会社を公開し、社内で上場するというぐらいの意味をもちます。両刃の剣でもありますので、導入には理論的な準備が必要です。

第7回:社員持株会の有無と、過去10年の経常利益と創業以来の黒字年数の関係

社員持株会の有無と、過去10年の経常利益平均との関係
単位:社
  赤字 2%以下 5%以下 10%以下 11%以上 合計
有り 1(0.1%) 41(38%) 45(41%) 20(18%) 3(3%) 110(100%)
無し 6(3%) 81(40%) 78(39%) 25(12%) 11(5%) 201(100%)
合計 7(2%) 122(39%) 123(40%) 45(14%) 14(5%) 311(100%)

 前回に続いて、社員持株会の有無と、利益がどのような関係にあるのかを探ってみたところ、上記のような結果となりました。
 2%以下を利益率の低い会社とした場合、有:38%で、無:43%で若干、無い会社のほうが多いですが、有意な差ではありませんでした。また、10%以下と11%以上を利益率の高い会社と考えた場合、有:21%、無:17%で、これも有意な差ではありませんでした。しかし、どちらも持株会がある会社の方がよい経営をしているのには、有意な違いがあると言えるでしょう。よって、持株会があるほうが、安定的な経営をしている傾向がありそうです。

 また、持株会の有無に関係なく、全体の傾向を見てみると、回答のあった企業の中で、赤字企業は全体のわずか2%でした。企業全体の赤字率は70%(2008年国税庁調査)ですから、長寿企業の優秀な経営が明確に出ています。ただ、アンケート全体の回答率は21%で、他の79%のうちにどれぐらいの赤字企業があるのかはわかりません。
 この表の中で利益率が低い2%以下は39%、3~5%は40%、6%以上は19%になります。財務省の法人統計調査では黒字企業の平均利益率は2.4%(2008年)ですから、3%以上の利益率を出している長寿企業は59%になりますので、さすがに、尊敬される長寿企業の優秀さが浮き彫りになっていると申せましょう。
 ぜひ、こういう経営を目指したいものです。

番外編:経営に想定外はない

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工場の屋根の上に車が乗っている。左下の人の背丈を比べれば、どれほどに高い津波が来たか、想像がつく。【クリックで大きなサイズの写真が見られます】


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釜石と大船渡の間の、名の知らない村。20mの高さの津波が来て、10mの堤防は切れ、2階建て建家の上に船が乗っている。村は奥の奥まで津波にやられ、全滅だった。【クリックで大きなサイズの写真が見られます】


 さきほど、岩手県宮古市から宮城県気仙沼市を回って東京へ戻りました。5月3日、新幹線・盛岡の駅から宮古へ電車で行き、そのあとは電車が走っていませんので、折り畳み自転車とヒッチハイクの一泊二日でした。
 宮古~釜石で一泊、大船渡~陸前高田~気仙沼までの駆け足でした。阪神淡路大震災の震度5は大阪で経験し、阪神間を何度も往復して現場を見ました。東日本大震災の震度5は東京で経験しましたが、テレビ越しだったので、日本の大きな転換点になる歴史の事実を自分で目で見みたいと思って、訪問しました。

 ヒッチハイクで大船渡で乗せていただいた40歳前後のシロタさん(男)。倉庫で作業をしていたら地震が来て、その後「津波だー!」という声を聞いて、全力で山へ駆け上がったが津波に足をとられ、あっという間に頭の上まで水に浸かった。「オレはこれで死ぬんだー」と思った数秒後、なぜか身体が浮いて杉の木にぶつかった。木につかまって水と一緒に上へ昇っていくと、しばらくしたら水が引いて、助かった。
 陸前高田の菅原さん(男・65歳位)漁師なので海辺で仕事をしていたら、大きな地震が来たので、「これは絶対津波が来る!」と思って、急いでトラックに乗って川の土手の道をひたすら昇っていった。途中で橋を渡っていったトラックは橋と共に津波にのまれたのを見て、後ろから迫る白いしぶきをようやく吹っ切った時は、力が抜けた。家に帰ると、家は流されて何も残っていなかった。命があっただけでも十分だ。

 6人の方々の車に乗せていただき、こういう話を聞きながら、降りては自転車で現場を見に行く2日間でした。想像以上の惨状でした。家なら3階建ての高さになるような工場の屋根の上に車が乗っていました。津波が置いていったのでしょう。大きな町では津波をかぶった部分は壊滅していましたが、他は残っていました。しかし、陸前高田はほぼ町の全体が滅ぼされていました。
 これらの町の間に点在する小さな漁村や漁港は採り上げられませんが、いくつもの小さな村が無くなっていました。高さ10mの堤防と水門は約20Mの津波に倒され、村を3キロ5キロと駆け上がっていました。海から3キロ以上離れた山間の家にまで津波が来るとは思っていなかった所での不明者が多いようです。

 しかし、岩手県普代村には人口約3千人の村に36億円をかけて作った高さ15,5mの水門と防波堤があり、地震直後の高さ20メートルの津波から住民を守りました(行方不明者1人)。津波のあと、防波堤に手を合わせに来た村民が大勢いたと聞きました。やった村長さんとやれなかった村長さん。私たちはこれを社長と置き換えねばなりません。
 今回の訪問で、つくづく「孫子の兵法」の一節を思い知らされました。「兵の形は水に象(かたど)る」。水に形は無いが、行く手を阻むものは時には一気に、時には時間をかけてもうがってしまう――。水の恐ろしさと備えの大切さ噛みしめた2日間でした。

第6回:社員持株会の有無と、家族主義・実力主義の関係について

グラフ

 調査結果データより、社員持株会の有無と、家族主義・実力主義の関係を調べたところ、上記のような表ができました。なんと長寿企業においても、目指しているのは「実力主義・やや実力主義」の会社が多く、全体の69%でした。その「実力主義・やや実力主義」を行っている会社において、持株会があるのは32%の約1/3。「家族主義・やや家族主義」の中で社員持株会があるのは46%でしたから、その差は14%。やはり家族主義を目指す会社のほうが、社員持株会が多く導入されていました。

 そして、社員持株会の無い会社のうち、「実力主義・やや実力主義」を標榜する会社は74%で、3/4の圧倒多数です。つまり、経営者にとって「実力主義・やや実力主義」で経営していると、社員持株会は時には邪魔になることもあるわけです。いわば経営者と持株会の社員は利益共同体として会社に参加しているわけですが、会社が順調に発展しているときは、その共同体意識はプラスに働きますが、逆境の時には社員数の削減ができにくくなります。よって、持株会に参加する社員は、前回の説明のように、管理職+10%程度に抑えているということでしょう。
 また、持株会がある会社では、「実力主義・やや実力主義」を目指す会社は61%です。持株会の無い会社とは13%の差がありますので、これは捨て置けない違いであろうと思います。
 ただ、このデータの調査対象は経営年数100年以上の会社であり、平均の経営年数は144年ですから、ずっと「実力主義・やや実力主義」で来たわけではありません。それこそ終戦直後には、「実力主義・やや実力主義」などとは言っておられませんでした。とにかく、社員を食わしていくのに経営者は必死で、主義も主張も言ってられなかった時代があったと思います。

「実力主義・やや実力主義」の考え方が入ってきたのは、おそらく1985年のプラザ合意以後、バブルが膨らんでいく時代を背景にして、外資系企業の人事施策として広がり、その考え方を導入した日本企業や経営者が採用してきた人事施策だと考えられます。そして皮肉なことに、バブルがはじけたあと、人員削減のためにさらに実力主義が日本企業の中に定着していきました。
 当社でも、社員持株会とは別に、業績賞与制度というのを導入しており、各事業所ごとに半期の業績に賞与を50%~200%に連動させる方策を採っております。導入してかれこれ10年ほどになりますが、今のところ、社員が受け取る賞与のほうがプラスになっているので、安堵しています。
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