経営年数100年以上の企業の経営スタイルと経営哲学を研究しています。調査・研究成果を発表してゆきます。

第73回 アンケート調査から見える長寿企業の平均像

11.経営の継承について

後継者の人選について重要なことは「同族であること」が第1位でした。2位以下には統率力や人柄が入っているので、それらは実力による評価です。経営の継承が上手くできた理由としては「同族経営を続けてきたから」が上がっており39.9%です。つまり、会社としては実力主義を標榜していますが、経営陣は同族で固め、経営権もしっかりと把握するという意図が見えます。よって実力主義は社員の評価に適用しているもので、経営陣および同族者については同族主義を堅持しています。
続いて、先代から受け継ぐ要素として、経営の6つの要素「ヒト、モノ、カネ、技術、情報、経営哲学」に分けて、同族経営者と非同族経営者に重要度を聞いたところ、わずかな差ですが、経営哲学を除いては、ほとんど有意な差が出ていません。経営哲学の重要さには如実な違いが出ており、これは特筆に値します。
経営の後継者から見て、先代からの引継内容で「経営哲学」の重要度を探ったところ、明らかに同族と非同族の経営哲学に対する評価に違いがあります。非同族経営者は経営哲学は自らで構築し、自分の手で練り上げてゆくことを望んでいます。
同族による経営哲学の「重要」と「やや重要である」の合計は82.1%で、非同族は67.7%です。さらに同族の「重要でない」「あまり重要でない」の合計は4.6%で、非同族は7.7%でした。確かに同族・非同族の間に違いはありましたが、非同族であっても2/3以上の経営者が「やや重要」「重要」と答えている事実のほうが特筆されるべきでしょう。
長寿企業でなければ、非同族の経営者がここまで先代から受け継ぐ「経営哲学」を重要と考えないと思われます。長寿企業では非同族企業の経営者であっても、会社が受け継いできた経営哲学を2/3の経営者が支持しています。これは今回の調査が明らかにした重要な気づきです。

第72回 アンケート調査から見える長寿企業の平均像

10.営業と資産運用について

創業時からの明らかな転業率は26%でした。創業時の商品の残存率を見ると、33%は創業時の商品は扱っていません。転業したのは26%で、33%と26%の誤差は転業していませんが、創業時の商品は扱っていないということです。
創業時の商品の販売率が売上高の25%以下が110社で、これは全体の38%です。度数では206社が取り扱いが25%以下、もしくは0%の会社なので、母数の286社で割ると72%です。売上比率が25%を下回っていると主力商品ではない可能性が高いので、ビジネスモデルとしては創業時とは変化していると想定され、約3/4が事業替えをしたと考えられます。これはチャールズ・ダーウィンが唱えた『進化論』に言われる「強い者が生き残ったのではなく、変化した者が生き残った」という定義に合致しています。
一方、創業時の商品が、現在も売上高の50%以上を占めているのは28%で、よほど創業者達に先見力があったか、開発した商品が素晴らしいか。いまだに競合商品を抑えていると考えられます。こういう商品をもった長寿企業は幸せです。
次に、売上と品質のバランスについて、「やや品質重視」と「品質重視」の合計は50.5%と過半数です。これは「やや売上重視」「売上重視」の合計の3倍以上で、ここには長寿企業の特徴が見られます。たとえ売上を伸張できる時でも、品質を落としてまで売上を上げようとしない。これが長寿企業の特徴的な経営方法です。
ただ、約30%を占める「どちらでもない」企業は、明確に「品質重視」とは答えていないので、経営環境、状況によっては「売上重視」のほうに傾く可能性があります。そうすると、50.5対49.5になります。仮に、「どちらでもない」の半分が「品質重視」のほうに傾くと65.5%で約2/3になります。
長寿企業ならではの特徴が出ているのが資産運用です。資産運用をしていないのが66.8%で、2/3は財テクをしていません。残りの1/3は過去にしたことがあって大幅な利益を上げられた会社は4.1%に過ぎません。この中にはいるのは至難の業です。

第71回 アンケート調査から見える長寿企業の平均像

9.長期にわたる経営維持の秘訣

長期で経営を維持するには、二つの要素が必要と考えられます。ひとつは思わぬつまづきに気を付けること。そして長期に維持・発展するためのノウハウ、メソッドをもつことです。
長寿企業の歴史にはいろんな出来事がありました。平均の経営年数が144年で、明治維新前から存在しているので、政変、内乱、大地震に戦争と幾たびもの波乱に見舞われてきました。おそらくそこには、先祖累代に伝わる経営の注意点が受け継がれているに違いありません。そこで「経営を危うくする事柄」を聞いたところ、第1位が「販売先の業績悪化」でした。

長寿企業は長年、手形を受領し、自らも手形を切ってきました。販売先の業績悪化は手形をもらっていると、連鎖倒産が起こる可能性があります。長い経営経験の中では、不渡り手形を掴んだことが何回か有ったに違いありません。その時に持ちこたえられたから、今日につながっているのですが、経営体力を超える不渡り手形を掴んだら、その時点で会社は終わります。多くの企業がそのように退場を余儀なくされたのを見てきたので、「販売先の経営悪化」がダントツの1位に選ばれていることが、時代背景からもよくわかります。
この項目で、もう一つ注目するのは、その他の項目が選択の第2位に上がっていることです。アンケートで設定した選択肢が足らなかったことが考えられます。その他の項目に記述されているので、その内容を見てみます。<多数順>

・市場変化への対応の遅れ
・過剰な設備投資
・労働争議
・為替の急変
・多角化の失敗
・社員のモチベーションの低下

これら第2位・その他の内容に続いて、「競合会社の台頭」「販売先の値引き要請」が上がっています。長寿企業は四方八方に目を配りながら、安全第一の経営を心がけている様子がよくわかります。
次に、長期にわたって維持・発展してきた要因を見ます。ここでも一番に上がっているのは取引先との関係です。これは先ほどの「経営を危うくする事柄」の裏返しです。経営を危うくするのも取引先なら、長期に経営を維持・発展してこれたのも取引先との関係です。320社の回答社のうち75社(23%)が「取引先との関係」を上げており、圧倒多数ではありませんが、第2位は49社(15%)なので、「取引先との関係」は維持・発展の要因の中では群を抜いています。
長寿企業が考えている経営の要注意先は取引先で、経営を維持・発展できるのも取引先との関係です。良い取引先をもって、できるだけ長く、注意しながらビジネスを続けていくのが、長寿の秘訣と言えそうです。
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